2020年9月3日、ヘルスケア・医療データ解析ベンチャーのBiofourmisがソフトバンクビジョンファンドから100m$を調達したと発表した。同社の資金調達フェーズは今回でSeriesCの調達であった。2019年5月にBiofourmisはSeriesBで35m$を調達。今回の調達は順調に同社の事業のフェーズが進展していることを示している。

ヘルスケア・医療データ解析 Biofourmis社とは?

Biofourmisは2015年にシンガポールで設立されたベンチャー企業である。事業展開が進むにあたり、近年シンガポールから米国ボストンに本社を移した。このような形で、シンガポールで成功し、米国へ進出するベンチャー企業はあまり例を聞かない。

創業者でCEOのKuldeep Singh Rajput氏は、MITメディアラボのカメラカルチャーグループの出身であり、シンガポール国立大学(National University of Singapore:NUS)で博士号を取得している。ウェアラブルヘルスケアソリューションと心臓の健康状態を監視するための生体信号分析に取り組んでいた。

Biofourmisは、慢性および急性状態の患者の生体情報をリモートで監視し、その情報を人口レベルのデータと比較したり、深刻な症状が発生する前にAIにより検出、予測、防止することができるソリューションを開発している。患者は医療グレードのウェアラブルデバイスを装着し、常時モニタリングをすることになる。そのデータは医療機関と連携され、臨床チームは常時患者の状態を把握することができる。対象としている治療領域は、心臓病学、呼吸器、腫瘍学、急性・慢性の痛みとなっている。

同社が提供するウェアラブルデバイスのデータはサーバーへと吸い上げられ、膨大な健康データがストックされていくようになっている。

どのようなウェアラブルデバイスを使っているのか?

実は、同社は2019年11月にスイスのウェアラブルデバイスベンチャーのBiovotionを買収している。このBiovotionは上腕に着用するタイプのウェアラブルデバイスを開発しており、医療グレードで様々なパラメーターを測定可能であるということで、ユニークな存在でもあった。元々、Biofourmisはハードウェアによらない、マルチデバイス対応のスタンスを取っており、複数のデバイスを患者が装着し、データを取得していたという。

Biovotionのデバイスでは、心拍数、血中酸素飽和度、皮膚の温度、皮膚の血液灌流、呼吸数、心拍変動、ビート間隔、ステップ、ストレス、睡眠、脈波伝播速度、エネルギー支出、発汗など、合計22種類のパラメーターが測定可能となっている。フィットネスグレードと、医療機器グレードと2種類存在しており、医療機器グレードでは、欧州の医療機器CEクラスIIaの認定を受けている。

今後の展開は?

Biofourmisは、米国とアジア太平洋、中国、日本を含む主要なアジア市場に焦点を当てていく予定である。これら市場への事業展開と、心臓病、呼吸器、腫瘍学、および疼痛などのリリース済みおよび未リリースのデジタル治療ソリューションの開発、検証、商品化に資金を投入していくという。


― 技術アナリストの目 ―
実は筆者が同社に注目したのは1年以上前であった。業界的にウェアラブルデバイスのデータをAIで解析し、病気の兆候検知や予兆を予測するような技術に取り組む企業は全世界のベンチャーを見渡しても数は多くなく、非常に特異な技術とポジショニングである。そこから1年経ってついにソフトバンクビジョンファンドから出資を受けて、完全に表舞台に出てきた。
日本企業においても、こうした病気の予測や予兆検知のような技術は、様々な新規事業への組み込みが期待されるものであり、今後のインテグレーションに期待したい。