2020年9月8日、サンフランシスコに本社がある3DフラッシュLiDARベンチャー企業のOusterが、SeriesBで42m$の調達を完了したと発表。今回の資金調達の目的は、新製品開発とグローバルでの既存製品の販売を加速するためという。

Ouster社とは?

 同社は2015年に創業し、交通輸送、ロボット、産業オートメーション、スマートインフラストラクチャー向けに高解像度のLiDARを提供しているベンチャー企業。これまでに800社もの顧客を有し、140m$の資金総額を調達している。同じくLiDARを製造する米Quanergy Systemsのスピンアウト企業。

 同社のLiDARはいわゆる360°回転式の機械式の機構を持つものであり、可動部分についてはすでに市場で出ている他社品と方式は変わらない。ただし、下記で同社の技術的特徴を説明しているが、本来的には同社の技術はソリッドステート機構に合っているものであり、今後ソリッドステート式のLiDARが出てくる可能性はある。

OusterのLiDARの技術的特徴は?

 同社の技術的特徴は主に2つある。

  1. 850nmの波長による利点
    • 同社は光源に850nmの波長帯を利用している。加えて、特許取得している独自技術を開発することで、利点に変えている。
    • 1つ目は、湿度に対するパフォーマンス向上である。大気中の水蒸気における波長の吸収が、他の905nmや1550nmの波長帯に比べて低く、比較的ロバストである。
    • 2つ目はシリコンCMOSセンサーにおいて、850nmの方が905nmなどの他の高い波長帯より感度が高くなる。システムを850nmで設計すると、センサーに向けて反射されたレーザー光をより高感度で、多く検知できる。この点が高解像度に繋がっているとしている。
    • 3つ目は高品質の周辺画像を実現するファームウェア。この実現も850nmに関係しているという。
  2. フラッシュLiDARであること
    • 同社のLiDARはフラッシュLiDARと呼ばれ、デジタル撮像のように2次元アレイ状のセンサーの視野にレーザーを広く拡散照射することによって3Dイメージを得るものである。
    • 通常、この方式は距離が遠くなると返ってくる光子の量が少なくなり、信頼性の高い検出が難しくなる。
    • 同社は、この課題に対してSPADs(シングルフォトンアバランシェダイオード)技術で受光部の感度を上げるとともに、VCSELs(垂直共振器型面発光レーザー)を組み合わせてマルチビームを低電力で照射することで、この課題をクリアしようとしている。

2020年1月に発表されたOusterの製品

 同社はCES2020で「OS2-128」というロングレンジ向けの新製品を発表し、CES Innovation Awardを受賞している。このLiDARは240mまでのレンジで測定することが可能であり、自動運転向けを用途として狙って開発されたもの。なお、同社の製品は1秒あたりのデータポイントが約260万点群と、他のLiDARメーカーに比べて優れていることもスペック上の特徴の1つである。


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


― 技術アナリストの目 ―
 LiDAR分野で非常に有望視されるベンチャーの1社であり、執筆時点ではまだ機械式のLiDARであるが、同社の3Dフラッシュはソリッドステート化に適した技術であるので、今後ソリッドステート製品が出てきたときにさらに注目を浴びるだろう。