2020年6月、イスラエルベンチャーのNeteera Technologies社が米国大手ニュース専門放送局のCNBCによるDisrupt50に選出されたと発表した。

 このDisrupt50とは、経済や生活を変革するベンチャー企業を表彰し、支援するもので、CNBCが独自に評価を行い毎年発表している。サイバーセキュリティ、教育、医療IT、ロジスティクス/配送、フィンテック、農業といった、様々な分野の技術が含まれており、10億ドルのバリュエーションに到達したユニコーンベンチャーも含まれる。

イスラエルのNeteera Technologies社とは?

 それらDisrupt50で選出された有望ベンチャー企業の中の1社が、2014年にエルサレムで設立された、イスラエルのNeteera Technologies社である。

 同社はサブテラヘルツ波を使った非接触の生体センシング技術を開発している。いわゆるマイクロ波を使った生体センシング技術と同じメカニズムであり、電界と磁界が相互に作用しあって伝播する波が体表にあたり、わずかな体動の動きにより位相が変化することから、反射波をの周波数の変化を解析し、心拍や呼吸を読み取るのである。

 同社の技術の特徴なサブテラヘルツ帯を使っていることにある。よく一般で使われるマイクロ波は周波数帯300MHz~300GHzのレンジであり、すでに市場化されている非接触の生体センサーでは、24GHzなどの周波数帯が使われている。また、自動車の車間センサーなどでは70GHz帯も使われている。一方テラヘルツとは1THz周辺の周波数帯のことを指し、サブテラヘルツ帯というのはおおよそ100GHz~1THzまでのことを指す。今回Neteera Technologies社が使っている周波数帯は140GHzである。

140GHzの電磁波を使った生体センシングの特徴は?

 高周波数帯の電磁波を生体センシングに使うことによる特徴は、「直進性が高くなる」「伝送情報量が多くできる」「分解能を上げられる」ことが挙げられるが、一方で空気中の水分による減衰が高いことが欠点である。

 日本においても京都大学とパナソニック社が共同研究で、79GHzを使った非接触小型バイタルセンサの開発に取り組んでいることを発表している。

詳細:https://news.panasonic.com/jp/press/data/2017/09/jn170926-1/jn170926-1.html

 Neteera Technologies社は、同社の技術を臨床グレードであるとしており、家・病院・自動車における生体センシングだけでなく、病院のER・職場・空港・ショッピングモール・およびその他の公共の場でCOVID-19の潜在的な患者を示す用途でも使用可能としている。


ー 技術アナリストの目 ー まだ本格的な実用化前の技術である。非接触で生体情報が取得できることもあり、用途としての拡がりの可能性は大きく、将来有望な技術。一般にテラヘルツ帯のレーザーを照射するには装置が大きくなってしまうことが懸念されるため、装置の小型化がどこまで進展するかを今後ウォッチしたい。