2020年9月23日、車載向け認識ソフトウェアを開発するカナダのベンチャー企業Algoluxが、ADAS・自動運転向けの次世代組み込みコンピュータビジョン認識ソフトウェアを、Embedded Vision Summitで発表した。

 ビジョンベースの先進運転支援システム(ADAS)、自動運転、スマートシティ、輸送アプリケーションを開発するチームに対して、最高クラスの精度とスケーラビリティの利点を提供するという。

コンピュータビジョンの後発である新星Algolux社とは?

 Algolux社は2014年にカナダのモントリオールで設立されたベンチャー企業である。コンピュータビジョンそのものというよりは、自動車OEMやTier1などの企業が自動運転のためにコンピュータービジョンを開発したり、研究する際に使うための一連のツール及び組み込みソフトウェアを提供している。

 コンピュータービジョンの領域ではすでに色々なベンチャー企業が出てきており、Algolux社は後発プレーヤーに位置する。競合は多く存在しているが、Algolux社は2018年5月にはGM Venturesから10m$をSeriesAで調達、2020年1月にも5m$の資金を調達している。また、同社の技術的特徴は数多くの受賞歴からわかる通り、AI・コンピュータビジョン業界において高く評価されている。

同社の受賞歴(この1年程度で多数の賞を受賞)

  • Top AI Award For ADAS and Autonomous Vehicles(Tech.AD Europe 2020 Conference)
  • Technological Innovation of the Year(Jalon Mobility Awards)
  • Most Innovative Application of Computer Vision(AutoSense)
  • 2019 Artificial Intelligence Excellence Awards
  • その他多数

Algolux社の技術的特徴とは?

 同社の技術で評価されている点の1つは、コンピュータービジョンにおいて悪天候や視界不良の環境下においても、高いロバスト性を持つ認識性能である。柔軟なエンドツーエンドのディープラーニングソフトウェアアーキテクチャを構築し、大幅に改善した精度と堅牢性を実現した。また、2つ目の特徴は、これらの組み込みアルゴリズムをスケーラブルなツールとして利用できるようにしたことである。ユーザーが保有する既存のデータセットを新しいシステム要件に簡単に適合させることができ、学習のための再利用が可能になり、既存のトレーニング方法と比較して労力とコストを削減できるとしている。

 2019年にAutoSenseの国際車両認識カンファレンスでMost Innovative Application of Computer Visionを受賞した時の審査員のコメントは以下である。

注)審査員にはGeneral MotorsのテクニカルスペシャリストやNVIDIAのプリンシパルImage Qualityエンジニアも含まれている

「Algoluxのアプローチは非常にユニークであり、イメージングパイプライン(ISP)の初期部分を含む、グローバルな最適化問題などの問題に対処するためのディープラーニングに基づいています。審査員は、それが市場に大きな価値を提供し、コンピュータービジョンの非常に革新的なアプリケーションであり、非常に価値のある勝者であると感じました。」

Most Innovative Application of Computer Vision 審査員コメントを引用
― 技術アナリストの目 ―
 すでに競争過多な中での後発コンピュータービジョンベンチャーが、こうしてAIやコンピュータービジョンのカンファレンスで賞を受賞し、徐々に成長しているのを目にするのは大変興味深い。現在はSeriesB手前というステージであるが、本格的に次の資金調達でSeriesBに成功したら、おそらく様々なメディアなどでより取り上げられるようになると思われる。その時を逃さないよう、動向をウォッチしたい。