サムスン(韓国)がGalaxy Watch3とGalaxy Watch Active2で心電アプリの利用が可能になったと2020年9月24日に発表があった。サムスンのスマートウォッチは2020年8月に、ECGのセンシングで米国食品医薬品局(FDA)の認可を得ており、今回の発表により米国で実際にユーザーが利用可能となる。このスマートウォッチを介した心電モニタリングにより、不整脈がないか心臓のリズムを監視し、心房細動(AFib)の兆候をスキャンできるようになる。

 サムスンは2020年4月にもGalaxy Watch用の血圧測定アプリが韓国の規制当局で承認を得て、先に韓国で展開を開始すると発表していた。同社によるヘルスケア・医療分野でのスマートウォッチの新機能の発表が続いている。

スマートウォッチの高付加価値(医療分野への進出)の流れ

 Apple WatchでECGモニタリングがFDAの認可を受けて話題になったのは2018年秋頃である。それから2年程度経って、最近、サムスンとFitbitもその流れに追随し、ECGモニタリングを搭載することになった。これはスマートウォッチの高付加価値化(医療分野への進出)であり、必然の流れと言える。

 一方で、すでにECGモニタリングについては今後はハイエンドスマートウォッチへの搭載はデフォルトになることも想定される。Apple、サムスン、Fitbitとすでに業界の流れはできつつある。ECGモニタリングで差別化・付加価値化できるのはこの1-2年で、その先はさらに進んだ付加価値を模索する必要があるだろう。例えば、現在は不整脈の中の1種類である心房細動しか検出ができないが、以前にオムロンが出資をした米国ベンチャーのAliveCor社のように、頻脈および徐脈と呼ばれる2種類の不整脈の検出も可能にするような方向や、ECGを連続的に測定するような方向性があり得るだろう。

選択を迫られる時計メーカーとスマートウォッチからの突き上げをくらうヘルスケア・医療機器プレーヤー

 2年程前から表面化しているAppleからFitbit、サムスンのECGモニタリングのFDA認可取得の動きは、本格的にスマートウォッチが医療機器となっていく発展の第一歩だったと言える。この動きは周辺業界に大きなインパクトを与え得る。

 時計メーカーにおいては、益々、こうしたスマートウォッチの動きに追従するかどうかの判断を迫られるだろう。追従する場合はスピード感が求められ、後発になればなるほど競争は不利となる。一方で、Appleやサムスンはこうしたヘルスケア・医療分野へ多額のR&D投資と、ベンチャー出資や買収をしており、単純な体力勝負となってしまうと日本の時計メーカーは不利となる。

 また、従来よりヘルスケア・医療分野で戦っている企業にとっては、場合によってはこうしたスマートウォッチを手掛けることは、将来的に自社の既存商品を破壊してしまう恐れがあり、本格的に着手することがやりにくい構造にある企業も多い。破壊的イノベーションの構造に近いが、まさにスマートウォッチも最初は「心拍しか測れず付加価値が無い」や「心電モニタリングの精度が悪く使いものになるとは思えない」と言った、反応から始まり、それがいつのまにが技術が進歩して既存の市場を破壊するに至る可能性も否定できない。

― 技術アナリストの目 - スマートウォッチへのECGモニタリング搭載は規定路線だったが、今回のニュースは非常に興味深く、この先の業界の方向性にインパクトを与えるものであった。上述したように、こうしたスマートウォッチの高機能化(ヘルスケア・医療分野への進出)は、周辺業界にどのような戦略で行くのか、対応を迫るものであり、今後の動きは益々目が離せないものとなる。