2020年10月5日、サンフランシスコを拠点とするLiDARを開発するベンチャー企業のOusterは、デジタルLiDARアーキテクチャに基づく新しい高性能ソリッドステートLIDARセンサーを発表した。

 新しいES2センサーは、ソリッドステート、高解像度、長距離デジタルライダーセンサーとなる。200メートル以上の範囲の検出レンジとなっており、自動車向けでの量産時の予想価格は600ドルとしている。

LiDARベンチャーのOusterとは?

 2015年にサンフランシスコで創業し、交通輸送、ロボット、産業オートメーション、スマートインフラストラクチャー向けに高解像度のLiDARを提供しているベンチャー企業。これまでに800社もの顧客を有し、140m$の資金総額を調達している。

 Ousterの技術については、下記でも概要をまとめているので、興味がある人はこちらも参照されたい。

関連記事:「3DフラッシュLiDARの米国ベンチャーOusterが42m$を調達し、製品開発とグローバルの販売を加速」

3DフラッシュLiDARとは?

 Ousterの技術はいわゆる3Dフラッシュ型と言われている。

 LiDARの光源照射の方法は大きく分けて、鋭い光を照射しモーターで回転させて走査させるスキャン型と、デジタル撮像のように2次元アレイ状のセンサーの視野にレーザーを拡散照射することによって3Dイメージを撮像するフラッシュ型がある。フラッシュ型は時刻ずれが無い3Dイメージを得ることができ、広範囲に照射するためモーターも不要としたソリッドステートとすることが多い。

 同社はこれまで、光源をアレイ状にしつつ、メカニカルの機構を取り入れることで、360度の測定が可能でありつつ部品点数を削減することに成功していた。

今回の新製品発表の新しいポイント

これまでとの差分は「ソリッドステート化」「低価格帯」であること

 Ousterは、これまでOS0(超広角ワイドビュー)、OS1(中距離対応)、OS2(長距離対応)と製品を出してきたが、どれも機構はメカニカル方式であった。またOS0は6,000$から、OS1は3,500$から、OS2は16,000$からと、HP上表記の価格帯は量産時の価格ではないものの、自動車に搭載するには高コストレンジであるため、自動車向けには中々適用できないものであった。

 今回Ousterは、同社で初のソリッドステート型として新製品ES2センサーを発表。特徴は最大200m(反射率10%)とロングレンジ対応が可能でありながら、量産時600$での提供を可能としているところである。安全性についてはASIL-B認定済み(※1)。

※1 ASILとはAutomotive Safety Integrity Level(自動車安全水準)のことである。ISO 26262規格で定義されたリスク分類システムであり、A<B<C<Dで識別される4つの段階がある。Aは最もハザードが低く、Dが最もハザードが高いものを対象として、安全性要件が決められている。エアバッグやアンチロック・ブレーキ、パワーステアリングは故障に伴うリスクが高いため、Dに分類される。

 同社の光の照射と受光は、VCSELレーザーチップとSPAD検出器アレイを組み合わせている。電子スキャン」を使用し、1つのチップに印刷された1万を超えるレーザーのアレイを順次発射する構造。これらのレーザーは、毎秒数兆個の個別の光子をカウントできるカスタムデジタル検出器アレイとペアになっている。

 この方式は「3Dフラッシュ」であり、同社のOS0~OS2と原理としては同じであるように見える。コンポーネントの86%を従来品と共有しながらも、今回の製品は可動部無しの完全なソリッドステートを実現したようだ。

 この製品は2022年からサンプル提供を開始する予定であり、2024年の量産開始に向けて開発を進めるとしている。

激化するソリッドステートLiDAR開発競争

 同社は今回の発表でLiDARの100$化に向けたロードマップを発表すると言っているが、このようにソリッドステートLiDARの開発に関する発表はこの1年で多く出てきている。今後の自動運転への本格搭載に向けて、ベンチャー・大手企業ともにしのぎを削っている状況だ。


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


ー 技術アナリストの目 ー 多くの企業がコストを下げるためにソリッドステートで、かつ自動車の高速道路でも対応できるように長距離対応化に取り組んでいる。同社の強みはすでにメカニカル方式のLiDARで工場が稼働しており、そのままコンポーネントをかなりの部分共通で利用しながらソリッドステートの量産に入れるところである。ただし、3Dフラッシュ方式×ソリッドステートにしたときにどこまでの広角性能が出せるか、などの論点は残るため、今後の技術開発の進展を見続けたい。