ハプティクス(触覚フィードバック)技術が数年前より注目されている。xRのような拡張現実や仮想現実、そして複合現実のアプリケーションが拡がり、自動車や医療分野など従来のコンシューマーエレクトロニクスを超えて用途開発が進むにつれ、より没入感を高めるために触覚フィードバックはコア技術となる。特に、今後自動車においては、次世代コクピットの流れでより高度なユーザーインターフェースとしてハプティクスの利用が検討されている。

このハプティクス技術に対して、国内外で大手企業やベンチャー企業、大学研究機関が様々に技術開発を行っている。

今回は、その中でも海外スタートアップにおける触覚フィードバックの有力企業である、フランスのHap2Uを紹介したい。

フランスのハプティクスベンチャー Hap2Uとは?

Hap2Uは2015年フランスで創業のベンチャー企業である。数年間にわたる研究開発の成果を元に同社が設立。触覚技術の開発によりハードウェアとソフトウェアに関する7つのグローバル特許を取得している。CEOはMEMSの博士号を持ち、STマイクロエレクトロニクス社で10年間研究開発部門で触覚に関するPJTに従事。その後に同社を立ち上げている。

同社の技術は第一世代は500μmのピエゾセラミックにより、物質の表面を指で触った時に生じる圧力を信号に変え、タッチ感覚(強い or 弱い、ボタンを押す、弾力さ、など様々な種類のもの)をセンシング。それをもとに圧電アクチュエータ―の微小な振動で摩擦を生じさせ、触覚をフィードバックするもの。現在は第二世代となっており、わずか2μmのピエゾ薄膜センサを使ったソリューションの開発に成功している。

特にマルチマテリアル対応が大きな特徴となっており、元々はスマートフォンのガラス表面を想定して開発をしていたが、その後想定アプリケーションを拡大。現在はガラスだけではなくプラスチック、木材、金属にも適用可能であるという。

同社の技術はCES2020でInnovation Awardsに選出されており、CESでも注目された。

※上記は同社が公開しているYoutubeへのリンク

欧州自動車OEMのダイムラーがSeriesAラウンドで出資

2018年10月には欧州自動車OEMのDaimlerがSeriesAラウンドで400万€の出資をしている。Hap2Uはこの資本提携により、新しいヒューマンマシンインタラクション(HMI)機能を開発し、技術を商業製造プロセスに移行する専門知識を向上させるという。

Daimlerの狙いは、将来的な車載への適用に向けた技術開発の支援であると考えられるが、詳細はまだその時間軸や具体的な計画などは明らかにされていない。

Hap2Uによると、消費者向けアプリケーションと制御アプリケーションの両方が要求される自動車アプリケーションは、同社の技術が適用できるスイートスポットである、としている。


ー 技術アナリストの目 ー触覚フィードバックの技術は今後の家電や自動車、xRに関連するアプリケーションにおいてコアとなる技術であり、同社は有望な企業の1社。実は同社が世の中で注目を集めたのは2017年にCESイノベーションアワードを受賞した時であり、3年前となる。そこから現在まで、継続して技術開発を続けているが、今回CES2020でのアワードを受賞したことにより、再度注目を浴びている。こうした触覚フィードバックのような少し実用化まで時間軸がかかるものは、このように最初に注目してから3~4年は平気でかかる。