ピーターティールが出資する3DホログラムディスプレイベンチャーOstendo Technologiesをご存じだろうか。

 ピーターティールはペイパルの創業者であり、米国のベンチャーエコシステムにおいて最重要人物と言われている。そのピーターティールが出資をしている3DホログラムディスプレイベンチャーがOstendo Technologiesだ。

 ピーターティールは、その著書Zero to Oneで「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何だろう」と問いかけ、競争は無駄であり、独占が大事だと説く。

 Ostendo Technologiesはどういう会社なのか。今回は同社の技術について見ていきたい。

Ostendo Technologies社とは?

 Ostendo Technologies社は、2005年に米国カリフォルニアで設立されたベンチャー企業。量子フォトニクス技術を使った独自のフルカラー超小型ホログラフィックディスプレイチップを開発している。Crunchbaseによるとすでに資金調達額は約90m$となっている。2010年にはDARPAの支援で、Ostendo Nanotechnology Labという研究開発施設も開設している。

 なお、同社はまだステルスモードであり、表に出している情報は多くない。しかし、着実に同社のディスプレイチップを小型化し、それを量産フェーズに進めていると見られ、2020年には大量生産のための半導体処理施設が完成する見込みという。

ホログラフィックディスプレイチップとは?

 指先に乗る程度の極小サイズのディスプレイである。同社はこの技術のことを「QUANTUM PHOTONIC IMAGER(量子フォトニクスイメージャー)」と呼んでいる。マイクロLEDピクセルのアレイを含む発光マイクロディスプレイデバイスとなっており、三次元集積回路(3D-IC)技術を使用して、パターン化されたフォトニック材料を、ピクセル制御回路のアレイを含む同等にパターン化されたCMOSデジタルロジックに融合する。

 このアーキテクチャは既存のマイクロデバイスの課題である電力効率、コンパクトさ、およびコストに関連する欠点を解決する、としている。

 SU Global Summit2019で共同創業者のEl-Ghoroury氏が登壇して技術の概要をプレゼンテーションしている。

注)上記は同社公開のYoutubeリンクを張り付け(https://www.youtube.com/watch?v=Cvh5Y_EaHhE)

ARデバイス用高解像度シースルーディスプレイを発表

 同社はこのチップを使った拡張現実ARヘッドセットも開発しており、最近ARデバイス用の高解像度シースルーディスプレイも発表している。これはMicrosoftのHoloLensの3倍である150度の視野角を持つ模様。レンズの側面に同社のQPIを複数配置し、画像がレンズを通して目に届く。

 同社の今後の展開はまだ不明だが、こうしたARデバイス用のディスプレイの第一ステップが示されたあたり、着実に市場化に向けて開発は進んでいるようである。今後、xRの市場が拡大するにつれ、こうしたコアとなるデバイス技術を保有する企業は業界において非常に重要なポジションを占めるようになることが期待される。


― 技術アナリストの目 ―
 非常に特徴的な技術であり、また今後の家電や車載といった色々な市場で適用可能性のある技術として大変興味深い。巨額の資金を調達しているが、依然としてステルスモードというのも有望材料である。なぜならば、こうしたxRの市場はまだ本格的に成長軌道に乗っておらず、早すぎる事業展開は資金不足を招いてしまうからだ。この2-3年の間、ぜひモニタリングしたいベンチャー企業である。