3Dホログラムという技術が実用化しつつある。ホログラムと聞いて、映画スターウォーズのシーンを思い出す人もいるかもしれない。まさにこうした未来のインターフェースの技術が一部で実用化しつつある。今回は3Dホログラム、および3Dホログラムではないがホログラムライクな技術の概要を紹介する。

3Dホログラムとは?

 3Dホログラムとは、「光の振幅」「光の波長」「光の位相」の3つを記録し、そしてその情報を完全に近い形で立体映像として再現する技術のことを指す。通常2次元の映像は光の振幅(強さ)と光の波長(色)で表現される。3Dホログラムは、2次元の情報に位相情報を加えることになる。位相情報とは、光がどの方向から来たのかを示す。

 ではどのように情報を記録するのかというと、光の干渉のメカニズムを使う。光源の光(レーザー)をハーフミラーで物体を照射する光と参照光に分離する。物体を照射した光は、物体光として振幅と波長情報を持つ。参照光はミラーに反射し記録媒体に照射される。この記録媒体で物体光と参照光による干渉が起こり、干渉縞という細かい模様ができる。この干渉縞が記録された情報となる。

 そして、情報の再生には光の回折を使う。ホログラムに対して再生光を照射することで、干渉縞によって回折が起こる。この回折した光によって、あたかも物体が存在しているように見えるのである。

実はARや疑似ホログラムとは異なる技術

 よくホログラムの話題の中ではARや疑似ホログラムといった技術も紹介されることがあるが、厳密には異なる技術である。ARは「拡張現実」という名前の通り、拡張的に情報を付与したもの。疑似ホログラムというのは、あくまで映像を偏向ガラスなどで反射させ、2Dのものをあたかも3Dに見えるかのように映す技術のこと。こうした技術は3Dホログラムライクな技術ということができるだろう。3Dホログラムの技術とは異なるという意味で、2.5次元の技術というようにも言われている。現在実用化されている多くの技術が、この2.5次元に属する。

3Dホログラムライクな技術の紹介

 3Dホログラムライク技術は古くからあるものも含めて、様々なものが登場している。

(1) ペッパーズ・ゴースト

 昔から存在している手法で、視覚トリックの一種。ディズニーランドのホーンテッドマンションや初音ミクなどのコンサートでも使われている手法でもある。主に舞台演劇で使われていた技術で、別の部屋にいる人に光を当てて、光の反射を利用して人の姿を舞台上に投影し、あたかもステージ上に人がいるかのように見せるもの。正面以外からは立体としてみることができない点が難点。

(2) ボリュームディスプレイ

 空間に映像をそのまま表示する方式であり、3Dのように見せるのではなく、空間に3Dをそのまま表示する技術。すでにこの方式で実用化し、商用販売しているベンチャー企業も存在する。3D眼鏡が不要で、周囲360度から見ても3Dに見えることが特徴。

(3) ファン型LEDディスプレイ

 ブレードにLEDを搭載し、ファンを回転させてホログラムを映し出すもの。あたかも空中に立体的な映像が浮かんでいるように見える。設置が簡単で費用対効果に優れているという特徴がある。日本においてもすでに「3D Phantom®」という製品が実用化され、市場で展開されている。

(4) 音響泳動ディスプレイ

 2019年に英国サセックス大学の、科学誌Natureに掲載された研究がある。これは、3Dコンテンツを提供するボリュームシステムであり、粒子を音波を使って補足し、赤・緑・青の光で粒子を照らして粒子の色を制御し、3Dコンテンツを表現する。音波を使っているため、生成されるホログラムの音を聴いたり、ホログラムに触れたりすることも可能という。

(5) コンピューター生成ホログラム

 光の動きを模倣した独自のアルゴリズムで、コンピューター上でホログラムを形成するデジタルディスプレイが開発されている。非常にユニークなアプローチであり、今後の実用化が期待される。ケンブリッジ大学Centre for Advanced PhotonicsのTim Wilkinson教授が支援しているVividQというベンチャー企業が取り組んでいる。


ー 技術アナリストの目 ー 3Dホログラムライクな技術も含めて、次世代のヒューマンマシンインターフェースとして、3Dホログラム技術は一部で実用化が期待されている。広告やデジタルサイネージの領域では使われ始めているが、本格的な社会での実装は、家電・スマホ・ゲームなどの家庭に入ってきた時か、自動車で使われ始めるタイミングであるが、これはもう少し先になることだろう。研究レベルでも面白い技術が色々と出てきているので、Techview Mediaで今後取り上げていきたい。