2020年10月22日、イスラエルの熱画像(LWIR)システムを開発するAdaSkyがSeriesBで15m$を調達したと発表した。このラウンドの投資家には、既存投資家である京セラと韓国の自動車部品ソンウ・ハイテックも含まれている。

 今回の資金調達により、市場の需要を満たす大量生産への移行を促進するための準備に活用されるという。

自動運転向けサーマルイメージングを開発するAdaSkyとは?

 AdaSkyは2016年にイスラエルで設立されたベンチャー企業。イスラエル航空宇宙軍(IDF Air Force)のオフィサーと自動車技術のベテランによって創業。サーマルカメラによる熱画像システムを開発している。軍事機器用の赤外線カメラ開発のバックグラウンドから、自動車分野へ展開している。

 サーマルイメージングの特徴は、夜間や霧が発生しているような条件下でも、歩行者や車両、動物を検知し、識別することができる。また、まぶしい太陽の影響を受けないことも利点である。

 同社によると、通常日中においてカメラと組み合わせた一般的な車両のロービームヘッドランプは、約80mまでの物体しか検出できず、オブジェクトが生物であるかどうかを判断できない。また、現在のADASに搭載されているセンサーでは、特に夜間の歩行者への事故による死亡者数の増加を防ぐことができない。そのため、通常のADASセンサー群に加えてサーマルイメージングを追加することで、全体のシステムの堅牢性と信頼性が高まるという。

 一方で、サーマルイメージングカメラはこれまでその大きなサイズと、高い消費電力、低い解像度、高いコストなど、様々な課題があり自動車での採用は進んでこなかった。AdaSkyはこの課題に切り込もうとしている。同社の遠赤外線サーマルイメージングシステムは、最大300m先の物体を検出し、すべての視界条件で200mを超える距離にある生物・物体を分類できる。

同社公開のYoutubeへの直リンク

 専用の画像信号プロセッサ(ISP)と特定用途向け集積回路で実行されるコンピュータビジョンアルゴリズムを使用する。学習アルゴリズムはCNN(畳み込みニューラルネットワーク)がベースになっている。

 大量生産が実現する場合、AdaSkyは1台あたりの生産コストを100ドル程度のコストを目標としており、自動車向けのアプリケーションは2024年の量産を目指しているという。


― 技術アナリストの目 ―
京セラも出資をしているAdaSkyがSeriesBに到達。いよいよ初期の量産に向けた準備に入った。自動車分野においても期待できるが、同社はCOVID-19の検知のためのサーマルイメージングシステムも開発しており、短期的にはこうした用途でマネタイズできることも期待である。