2020年10月27日、ドイツの総合自動車部品大手のコンチネンタルが、マイクロMEMSを可動部に採用したLiDARベンチャーであるAEyeに少額出資をしたと発表した。

 コンチネンタルによる出資の目的は、乗用車と商用車において、SAEレベル3以上の自動運転向けLiDARを商品化するための共同開発強化である。最初の量産は2024年末を予定しているという。

 コンチネンタルは、すでに発表した2020年末に連続生産へ移行する短距離3DフラッシュLiDARを補完するものとして、同社との提携を位置付けている。

コンチネンタルが出資をしたLiDARベンチャーAEyeとは?

 AEyeは2013年創業の、カリフォルニア州に拠点を構えるLiDARベンチャー企業。技術の出自は、元々CEO・CTO・取締役が戦闘機の認識・ターゲティング・防衛システムを開発していたところから来ている。

 AEyeにおけるLiDARの技術的特徴は、高い動的空間分解能と長距離検出、そしてMEMSを使ったソリッドステートによる低コスト化にある。

 光源には1,550nmのレーザーを採用。また、特許取得済みのフィードバック制御微小電気機械システム(MEMS)スキャナーを組み合わせた長距離LiDARテクノロジーを開発した。同社の機構はMEMSを使っているため、完全なソリッドステートではないが、可動部がほとんど無いものとなっており、量産時のコストを抑えることができる。

 300m以上先の車両を検知することが可能であり、歩行者は200m先でも検知することができる。160m先にあるレンガなどの小さく、低反射率の物体でも検知可能という。こうした長距離検出も同社の1つの特徴だ。

同社公開のYoutubeへの直リンク

 また、分散アーキテクチャ内に埋め込まれたAIを使用して、AEyeのLiDARシステムは一般的な環境を動的にスキャン・評価し、対象のターゲットとオブジェクトを追跡する。このシステムは、消費電力を従来の5〜10倍を削減しながら、最大10倍の処理速度を実現する。

 同社はその基礎技術に関して、2018年に多数の特許を取得している。MEMSを使ったLiDARの動的スキャン・ショットパターン、そしてレーザーパルスの形成、各ポイントクラウドのVoxel(三次元グラフィックスなどで、立体物の表現に用いられる小さな立方体の最小単位のこと)へのデータアクセス方法など、システム全体に渡る。なお、2020年11月時点で、同社の特許は申請中のものも含め100件を超えている。


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


― 技術アナリストの目 ―
次々と来るLiDAR関連の動きである。コンチネンタルがAdvanced Scientific Concepts社の3DフラッシュLiDARを買収したのは2016年であり、それ以来、同社のLiDARは3Dフラッシュで内製化の方針であるかと思いきや、今回AEyeへの資本・業務提携も行った。3Dフラッシュは検出距離に課題がある技術であり、今回のリリースにもあるように短距離と中・長距離の技術を分けて取り組むということになった。

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