血糖値のモニタリングはデジタルヘルスケア領域で大変注目されている市場である。従来からある方法は指先からの血液を採取し、分析することで血糖値を測定しているが、マイクロニードルに代表される痛みを伴わないCGM(Continuous Glucose Monitoring:連続グルコースモニタリング)でグルコースモニタリングを行う方式が、何年も前に登場した。この市場を牽引するのはAbbott社のFree Style Libreや、Dexcomのパッチ型センサであり、現在急成長中の市場である。

こうした急成長する市場に対して、スマートウォッチ型のセンサデバイスでアプローチする企業がPKvitalityである。今回は同社について紹介する。

スマートウォッチ×マイクロニードルでCGMを行う

PKvitalityは2016年にフランスで設立されたベンチャー企業。同社は家電デバイスの設計と生物化学的アプローチの知見を組み合わせて、スマートウォッチにマイクロニードルセンサを組み込んだグルコースモニタリングデバイスを開発している。

まだアーリーステージであり、資金調達総額は€2.3mとなっている。この€2.3mはドイツの大手家電・美容・医療機器メーカーのBeurer GmbHが2020年1月に出資を行い、資本業務提携を締結している。Beurerはドイツ、オーストリア、イタリアで独占的な商品化権を取得した。

同社は2019年にEIT Health Summitというヨーロッパのヘルスケアカンファレンスでのカタパルトコンテストで、MedTechセクションで優勝している。

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 グルコースモニタリングデバイスK’Watch

そんなK’Watchであるが、スマートウォッチの裏側(皮膚と触れる面)にマイクロニードルパッチが組み込まれている。このマイクロニードルパッチは、時計に収まる程度の数cm角の四角片である。このマイクロニードルパッチは皮膚の下にある間質液にあるグルコースレベルをセンシングする。

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間質液とは細胞と細胞の間に存在する液体のことで、グルコースは血管を通って毛細血管を通して間質液に移動していく。そのため、間質液中のグルコースレベルと、いわゆる血糖値とは厳密には異なるが、ある程度の相関があることがわかっており、現在市場で存在しているCGMの多くがこの間質液中のグルコースレベルを測定するタイプとなっている。

K’Watchのマイクロニードルパッチは7日間連続で使用が可能であり、7日間ごとにパッチ部分を取り換える仕様となっている。5分ごとにアプリ上でデータを更新する仕様となっている。K’Watchではほかに歩数・距離・カロリーや、心拍数、睡眠データも測定が可能という。

このK’Watchであるが、現時点ではまだ医療機器認定がされていないため、ユーザーは利用することができない。同社のWebページによると、実験レベルで20人のユーザーがいるようである。

ダッソーシステムズとサノフィが支援

2020年3月には、ダッソーシステムズの3DEXPERIENCE Labというアクセラレーションプログラムで支援を受けることを発表した。その中で、同社は大手製薬企業のサノフィからも支援を受けていることを明らかにしている。

なお、2019年11月にサノフィのVP Corporate M&AのAlexandre Richard氏がアドバイザーに就任している。現時点でサノフィからの支援はまだ限定的であると考えられるが、同社の技術について強い興味を持っていることがうかがえる。


― 筆者の目 ―
まだアーリーステージであるが、スマートウォッチ型ということで、従来のパッチセンサ型CGMに比べてより生活で使いやすい形に製品を仕上げようとしている点が面白い。Free Style Libreは上腕につけるタイプであり、Dexcomのデバイスは腹部に貼るタイプであったりと、あまり生活上普段つけることが無いものを、体につけることになる。ただし、どこまでユーザー体験上の差別性が出るかは今後のPKvitality社の製品完成度次第。また、7日間ごとにパッチを取り換えるというのもややネックとなる。マイクロニードルパッチの耐用日数が長くなるといったことも重要な要素だろう。