2020年10月、2足歩行の作業用ロボットを開発する米国ベンチャー企業のAgility Roboticsが20m$を調達したことを発表した。

DCVCとPlayground Globalが共同で今回の資金調達ラウンドを主導し、TDK Ventures、MFV Partners、Industrial Technology Investment Corporation、Sony Innovation Fund、SafarPartnersが参加した。Crunchbaseによると、同社の今回の資金調達はシリーズBにあたり、設立以来29m$の調達資金総額となる。

2足歩行の作業ロボットとは?

Agility Roboticsは2015年創業のベンチャー企業である。そのルーツは2009年~2016年のオレゴン州立大学のDynamic Robotics Laboratoryでの研究開発を経て、商業化のためにAgility Roboticsへライセンス供与された。現在、同社のロボットDigitはすでに市場投入されている。

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ロボットが2足歩行で物を運ぶ様子がわかる

共同創設者兼CTOのJonathanHurst氏は、次のように述べている。「2足での移動に対する独自のアプローチを理解し、階段、縁石、廊下、凹凸のある表面などの人間が活動する空間で動作するロボットのビジョンを共有する投資家と協力できることをうれしく思います。古典的な「鈍い、汚い、危険な」人間の仕事のいくつかを自動化するために、業界全体でDigitの開発と展開を加速することを楽しみにしています。」

ラストワンマイルの1つのピースにもなるか?

CES2020で自動車OEMのフォードが発表したのは、Agility RoboticsのDigitを使って、物の配送を家の前まで自動運転車で行い、車から家に物を運ぶのをDigitが行うというデモンストレーションであった。

このように、人間が活動するような複雑な生活環境で物を運ぶことができるDigitのようなロボットは、ラストワンマイルの1つのピースになる可能性を秘めている。

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FordとAgility Roboticsの協業で実現する世界観を説明している

ー 技術アナリストの目 -
CES2020のフォード社のブースにおけるデモンストレーションでも話題になったAgility Roboticsがようやく資金調達にこぎつけた。本格的な事業展開は、今回調達した資金を使って、どこまで実際に用途開拓ができるか次第であろう。2足歩行ロボットは、ホンダのASIMOや産総研のHRP-2など、以前は日本のお家芸であったが、こうやって実際に事業化しそうなのは海外から、というのが悔しい思いである。もう1つ注目はTDKのポジションだ。TDKは今回CVCを通して同社と接点を持っているが、センサー類を提供していくことになる。部品メーカーが川下の企業と組むことで、市場を創っていくという興味深い事例だ。