Apple WatchやFitbitをはじめとして、様々なウェアラブルデバイスで心拍や呼吸などの生体情報を取得できるようになっているが、デバイス装着という制約があるため、非接触で測定するという技術が開発されている。
代表的なものの1つとしてカメラベースでの生体情報センシングがある。この技術開発で進んでいるのが、イスラエルのベンチャー企業Binah.aiだ。
CES2020でもイノベーションアワードを受賞した同社について今回は紹介する。
イスラエルのベンチャー企業Binah.aiとは
Binah.aiは2016年にテルアビブで設立されたベンチャー企業である。同社の技術はスマートフォンやタブレットなどのカメラを通して映る人の顔から、ディープラーニングアルゴリズムを使用して画像を分析し、生体情報をセンシングするというものだ。
これはrPPG(Remote Photoplethysmography:リモートフォトプレチスモグラフィー)、またはiPPG(Imaging Photoplethysmography:イメージングフォトプレチスモグラフィー)と言われる技術だ。
測定のメカニズムは、心拍のために血管内の血液の体積や酸素飽和度の変動によって引き起こされる皮膚表皮下の色の小さな変化を測定するもの。Binah.aiの技術は、皮膚からの赤、緑、青の光の反射の変化を測定し、鏡面反射と拡散反射のコントラストを定量化して分析する。心拍数、心拍変動、酸素飽和度、呼吸数、また心拍変動を通して評価される精神的ストレスを測定することができるという。
SOMPOホールディングスとサンリオピューロランドでPoCを実施
2020年10月に、SOMPOホールディングス、サンリオピューロランド、一般社団法人 CDO Club Japanが、Binah.aiの技術を使ったPoCを実施すると発表された。
これは「スマホカメラを使ったレジャー・娯楽サービス産業の従業員向け健康チェック」を目的として実施される。SOMPOホールディングスは、テーマパーク、ショッピングモール、スタジアムなどの施設を安心・安全に利用できるように、従事する従業員の健康状態、特に呼吸器や気管支の異常をどこでも把握できるサービスの開発に取り組んでいるという。そうした取り組みにBinah.aiの技術が活用できるか、PoCを行い検証をしている。
なお、この実験は2020年10月1日から11月30日まで実施されるようであり、実験の検証結果の公表を待ちたい。
近年のカメラの高精度化とAI技術の発展により、iPPGは非接触で測定可能な技術として面白いものとなっている。照度環境、環境温度などの外部要因が条件に合えば、ある程度正確に心拍数が測定できるというものわかっている。一方で、測定可能なパラメーターが心拍数だけではあまり価値が高くなく、SPO2や心拍変動などが測定できればアプリケーションが拡がるが、こうした生体パラメーターにおいてはその精度は未検証な部分も多いと考えられる。