2020年11月23日、ベンチャーキャピタルのDowning Venturesが米国ベンチャー企業のCarbice Corporationの資金調達ラウンドをリードし、トヨタAIベンチャーズが出資者として参画したことをニュースリリースで発表した。

Carbice Coporationの今回の資金調達は、シリーズAにあたり、総額15m$の資金を調達したという。Carbiceはカーボンナノチューブを使った複合材料でできている高熱伝導材料を開発している。

Carbiceが開発するカーボンナノチューブを使った高熱伝導材料

Carbiceは、カーボンナノチューブの分野で長年研究を行い、特許の取得や複数の賞を受賞しているDr. Baratunde Cola氏によって設立された。2011年に設立されたBara氏の知的財産持株会社がベースとなり、2016年にジョージア工科大学のAdvanced Technology Development Center(ATDC)内で現在の企業の形となった。

航空宇宙、自動車、家庭用電化製品などでは、チップの小型化や半導体の高度化によりサーマルマネジメントが求められている。同社はこうした熱の課題を解決するための高熱伝導材料を開発している。

これは、リサイクルされたアルミニウムと垂直配向性を持つカーボンナノチューブアレイによる複合材料となっている。乾いた粘着パッドとして形成することができ、簡単に塗布および再加工することもできるという。同社は2017年にこの材料をテープ状にして宇宙衛星向けで提供してきた。

同社のこの技術はNational Science Foundation(NFS:アメリカ国立科学財団)や米国空軍、SBIR(中小企業技術革新制度)によって資金支援されて長年開発されてきた。現時点では90%歩留まりのバッチ処理での生産プロセスが確立されており、今回調達した資金を使ってスケールアップする予定であるという。


ー 技術アナリストの目 -
TIM(サーマル・インターフェース・マテリアル)は電子機器や自動車において今後重要な材料の1つとされており、高熱伝導率を持つカーボンナノチューブのTIMへの活用は富士通などの日本の大手企業からも発表されている。この分野で15m$の資金調達をするというのは例も多くなく、今後の量産プロセスの開発に期待したい。