海外のマインドフルネス市場が大きく成長している。この動きはもう何年も前から米国を中心に起こっており、近年、そうした市場の成長に伴い、スタートアップの売上という形でも結果が出てきた。

マインドフルネスは、瞑想やリラックスするための手法を通して、今この瞬間の自身の精神状態に深く意識を向けること。そうした行為を通してストレスマネジメントを行ったり、応用して認知療法に繋げたりする。

驚くことに、米国では高齢者の53%以上が少なくとも週に1回は瞑想しているという言及がある(参考記事はこちら)。このマインドフルネス市場で、売上が100億円を超えたベンチャーがCalmだ。

今回はマインドフルネス市場の主要プレーヤーであるCalmについて紹介したい。

マインドフルネスアプリベンチャーCalmとは?

Calmは2012年にサンフランシスコで設立されたベンチャー企業だ。すでにユニコーン入りしていると言われており、これまでの資金調達総額は143m$にも上る。(なお、ユニコーンとは、時価総額が10億ドル以上の未上場のスタートアップを指す)

実は同社は2012年に設立され、2014年にシードラウンドで資金を調達してから、シリーズAで27m$を調達するまでに実に4年かかっており、こうした一般コンシューマー向けのアプリとしては時間がかなりかかっている。しかし、2018年にシリーズAを行ってからは、2019年にシリーズBで100m$以上の資金を調達し、ここでユニコーン入りしたと言われ、この2-3年で急激に成長している。

同社が提供するのは一般消費者が使うマインドフルネスのためのアプリだ。すでに同社のアプリは世界で5,000万人がダウンロードし、70万人が5つ星評価をつけているという。ユーザーはアプリ上で、瞑想のスキルを学んだり、より睡眠を良くするための音声コンテンツを聴いたり、リラックスする音楽を聴くことができる。

入門コンテンツは無料で利用できるが、ほとんどのコンテンツは有料ユーザーにならないと利用はできないものとなっており、有料ユーザーは6,500円/年というサブスクリプションモデルとなっている。有料ユーザーは増え続ける高度な瞑想のライブラリ、心地よい睡眠ストーリー、落ち着いた自然のシーン、呼吸ツールなど、100時間以上のプレミアムコンテンツにアクセスできる。

同社公開のYoutubeへの直リンク

Calmの有料ユーザーは2百万人

2019年の段階で、Calmの有料ユーザーは2百万人いるという。また同社の売上高は100億円を超えている。これは驚異的な成長を見せている。有料ユーザーは2018年から2019年にかけておおよそ2倍に伸びているようだ。(参考記事はこちら

年額6,500円というのは、こうしたウェルネスアプリの領域では必ずしも安くはない。ユーザーの継続率については不明だが、有料ユーザーが急上昇しているのは大変興味深い。

なお、同社は現在はBtoBビジネスとして、企業へのCalmの導入を行うプランも提供を開始している。このCalm Businessは、これまでに600社以上の組織に導入がされおり、プランに応じてアプリだけでなくウェビナーが提供されたり、アプリの利用状況の分析レポートなどが提供されているようだ。

デジタルからオフラインへ

同社はブログで、将来的にはデジタルからオフラインへの事業領域の拡大を示唆している。現時点でもすでに本の出版を行ったり、スリープミストという睡眠補助剤を自社で開発している。衣類・家庭用品などの開発や、ホテルなどのプロデュースも計画しているという。(参考記事はこちら

(同社ウェブサイトはこちら


ー 技術アナリストの目 -
いわゆるウェルネスやヘルスケア系のアプリはマネタイズにうまく行かないケースが多い中で、実際に有料ユーザーが2百万人規模でつき、売上が100億円を超えるというのは大変興味深い。マインドフルネスというトレンドがあり、特に米国を中心にこうした領域にデジタル技術が入り始めている。日本においてもマインドフルネスの流れはあるが、こうしたコンテンツに課金するというモデルに対してはやや市場が堅い印象であり、アプリをフックにして別のマネタイズを検討していく必要があるだろう。