鋳造や機械加工などの加工条件や、設計上の制約条件を元にして、自動的にアルゴリズムで設計を行う技術を開発するスタートアップがいる。いわゆるジェネレーティブエンジニアリングという領域である。

従来、手作業で3D CADで部品設計を行ってきた作業を、アルゴリズムで自動設計できるようになれば、設計初期段階から様々なモデルの可能性を検討でき、人間では思いつかなかった設計提案がされるかもしれない。

そうした可能性を秘めた、ジェネレーティブエンジニアリングに取り組むドイツのスタートアップELISEを今回は紹介したい。

機械設計自動化ツールを開発するスタートアップELISEとは?

ELISEは2018年にドイツのブレーメンで設立されたベンチャー企業である。製品開発プロセスの自動化を目的とした自動生成エンジニアリングソフトウェアを開発している。

設立年は2018年だが、実は同社の技術の元となる取り組みは2006年まで遡る。アルフレッドウェゲナー研究所での基礎研究時代に自然の軽量構造の原理と成長プロセスを解析するノウハウを溜め、そこで得られた知見をベースに、製品開発の設計へ転用。

ELISEはロードケース、サイズ、コストなどの要件を収集し、設計者が割り当てたパラメーターに一致する製品を設計するのを自動化する。

同社公開のYoutubeへの直リンク

アプリケーションは現時点では自動車・航空機・コンシューマー製品のようだ。すでに一部で実証が始まり、その有効性が確認されている。

BMW i Venturesも2019年11月に出資

2019年11月にELISEはシードステージの資金調達ラウンドを実施。3m€の資金調達を実施している。このシードステージで出資を行った1社がBMW i Venturesだ。

BMW i Venturesが同社に投資をした背景は、「BMWグループでの最初のトライアル中に高い効率の向上が見られた」ため。今後さらにトライアルを拡げる模様。

なお、BMWグループでの実績として公開されているのは四輪車ではなく現段階では二輪車のもので、かなり特殊なシチュエーションの部品だ。モンゴルのオフロードバイクのレースで使う二輪車のラジエーターカバーであり、3Dプリンタで作られる特注品である。

BMWが出資を行った当時のニュースリリースによると(ニュースリリースはこちら)、他にもMAN、Ariane Group、Broseなどの自動車および航空宇宙業界のOEM・Tier1との独占的なβ版テストを行い、12か月に渡りソフトウェアを検証し、エンジニアリングにかかる時間を最大90%節約することに成功したという。

ただし、BMWの事例に見られるように、現時点では限られた部品でのトライアルが多いと思われる。


ー 技術アナリストの目 -
ジェネレーティブデザイン・エンジニアリングは設計ソフトウェアの企業を中心に実用化の開発が進む。ELISEのようにスタートアップとしてこうした領域に取り組む企業は多くは無い。すでに接点があるBMWやVolkswagenを中心に、こうした大手企業でユースケースが開発されると、さらに世の中で活用してみうようという試みが増えてくる可能性があるが、まだしばらく時間がかかりそうだ。