2020年12月11日、現代自動車グループが4足歩行ロボットを開発する米国ベンチャー企業のボストンダイナミクスを買収することを発表した。なお、買収額については公開されていない。

ソフトバンクが20%残して株式を売却

今回の発表は、現代自動車グループとソフトバンクグループにおける合意がベースとなっている。

現代自動車グループはボストンダイナミクスの約80%の株式を保有し、ソフトバンクはその関連会社を通じて、取引終了後もボストンダイナミクスの約20%の株式を保有するという。

なお、現代自動車グループの関連会社である現代自動車、現代モービス、現代グロービス、それぞれ現代自動車グループの鄭義宣会長が買収に参加した。

4足歩行ロボットを開発するボストンダイナミクス

ボストンダイナミクスは、1992年に設立された米国のベンチャー企業。元々はDARPA(米国国防高等研究計画局)の支援のもと、様々な自律型ロボットを開発してきた。

特にボストンダイナミクスが有名となったのは2013年にGoogleが同社を買収した時だろう。しかし、そのGoogleも短期的な収益を生まない事業については手放す方向で方針転換を行い、2017年にはソフトバンクグループに買収される。

同社が公開しているYoutubeへの直リンク

このように、ロボット業界で注目されている同社であるが株主を様々変えてきた。自律ロボットでの事業化がいかに難しいかがわかる。

現代自動車グループによる物流ロボットやサービスロボットへの参入

今回の現代自動車グループによる買収の背景は、現代自動車グループが、ロボット市場に注目していることから来ている。

現代自動車グループが狙うのは、物流の自動化を確立するための物流ロボットや、公安や安全などの分野での商用利用を超えた幅広い利用の可能性を秘めたサービスロボット、健康関連でロボットを使用して、障害者や高齢者に移動の自由を提供するなどのユースケースである。

現代自動車グループの会長であるEuisunChungはこうコメントしている。

「モバイルロボットの世界的リーダーであるボストンダイナミクスが現代チームに加わったことを嬉しく思います。この取引により、現代自動車グループとボストンダイナミクスの機能が統合され、将来のモビリティの革新を先導します。両社によって生み出された相乗効果は、刺激的な新しい経路を提供します。私たちの目標を実現するために、人類に自由で安全な動きとより高い生活体験を提供していきます。また、高齢化社会とデジタルトランスフォーメーションの世界的なトレンドの中で、安全性、セキュリティ、公衆衛生を強化することにより、社会に貢献します。」

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ー 技術アナリストの目 -
ボストンダイナミクスはようやくSPOTという4足自律歩行ロボットSPOTを2020年から販売開始している。これまではDARPAなどからの支援や受託といった形でのビジネスだったが、本格的な事業化のチャレンジはこれからである。自律ロボットの領域は短期的には収益を生むかどうか不透明な部分が多く、短期で事業を見切る現在のGoogleやソフトバンクグループとは時間軸が合わず、事業会社で長く取り組む必要がある。その意味では現代自動車というのは活用用途の幅も広く、相性が合うかもしれない。