様々なヘルスケアウェアラブルデバイスが登場する中で、足というのは少し変わったアプローチだ。今回はそんな足から健康管理を行うデバイスで着実にステップを進めているSirenというベンチャー企業を紹介する。

靴下型のデバイスによる糖尿病性足潰瘍の状態検知

Sirenは2015年に設立された、サンフランシスコに本社があるベンチャー企業。まだ設立されて5年足らずであるが、すでに資金調達総額は30.5m$を超え、シリーズBに到達している。

Sirenが開発しているのは靴下型のウェアラブルデバイスだ。このソックスを履くことでユーザーは足の温度を継続的にモニタリングすることができる。

これはある病状のユーザーには非常に大きな価値を持つことになる。それは、糖尿病患者が合併症で「糖尿病性足潰瘍」を引き起こすことがあるという課題だ。この足潰瘍はチェックしないままにしておくと、切断を含む深刻な合併症を引き起こす可能性がある危険な状態を表している。2018年に発表された糖尿病性足潰瘍の経済的負担に関する論文(リンクはこちら)では、糖尿病性フットケアの患者1人あたり平均年間支出は8,659$であるという。

この糖尿病性足潰瘍は、前兆として足の温度上昇という現象が起こることがわかっている。通常はこの現象を人が手動で監視するため、主に診療所への訪問での検査に依存している。しかし、潰瘍は数時間または数日で形成され、診療所への訪問と訪問の間に急速に悪化する可能性もある。

Sirenのソリューションは、足の温度を連続的に測ることで、リアルタイムの検出と早期介入を可能にし、症状の悪化を防ぐことができるものだ。

同社は、マイクロセンサーをファブリックに埋め込む独自のテクノロジーを開発し、手頃な価格で洗えるスマートテキスタイルの大量生産を可能にした。ナノファブリックで埋め込まれたセンサーで読み取った足の温度データは、Bluetoothを介して常時アプリ上へ送り、ユーザーはリアルタイムでモニタリングが可能となる。

サブスクリプション型のビジネスモデル

同社のビジネスモデルは非常に特徴的だ。通常ウェアラブルデバイスは売り切りであることがほとんどのこの市場において、サブスクリプションモデルに挑戦している。

ユーザーが支払うコストは月額29.95$、6か月ごとに新しい靴下デバイスを受け取るという。靴下は100回以上洗うことができ、充電は不要だ。

この靴下型デバイスは直販はしておらず、診療所の医師から処方される。医療機関と密接に繋がっており、同社のデバイスはFDAの承認も得ているものだ。

同社の最近の発表によると、今年に入ってから月額サブスクリプションが劇的に増加し、従来の契約の20倍になったという。この成長には、テキサス州で最大の足病学ネットワークのクリニックStridecareからの注文も寄与しているという。


ー 技術アナリストの目 -
同社が表舞台に出てきたのはCES2018でイノベーションアワードを受賞した時だろう。当時はまだシードステージであり、プロトタイプであったが、それから3年程度で一気にビジネス化し、ユーザー数が急激に伸びている状態となっている。足の温度という普段測りにくいものをテクノロジーで見えるにようにし、糖尿病性足潰瘍という深刻なユーザーの課題にソリューションを提供するという、ユーザーのペインと提供価値が非常に明確な、筋の良いビジネスだ。