3DフラッシュLiDARを開発している米国ベンチャー企業のOusterが、特別目的の買収会社であるColonnade Acquisition Corpと合併契約に合意したことを2020年12月22日に発表した。

合併が完了すると、合併後の会社はOuster, Inc として運営され、ニューヨーク証券取引所に上場される予定という。

3DフラッシュLiDARを開発するOuster

Ousterは2015年にサンフランシスコで設立されたLiDARベンチャーである。近年注目されている自動車向けだけでなく、ロボット、産業オートメーション、スマートインフラストラクチャなど、幅広い用途に展開している。3Dフラッシュ方式のLiDARを開発しており、現在注目されるLiDARベンチャーの1社だ。

同社は、2020年9月にはシリーズBで42m$もの資金を調達したばかりだったが、今回SPAC上場を通してさらに多くの資金を調達することになる。

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Ousterの投資家向け事業計画書のレビュー

同社は現在、ウェブサイト上で投資家向け事業計画書を公開している。この事業計画書にはこれまで公開されていなかった情報も含まれるため、いくつか興味深いポイントを整理したい。

(1) 顧客は順調に開拓できている模様

2018年にOS1-64を発売した同社であるが、この時点で発売時に受注確定していたもので1m$分の受注があったようだ。現時点で、同社のLiDARを購入したユーザーは450社以上、50か国にも渡るという。2020年だけで約250社を開拓したようだ。(ただしこの250社は本格受注ではなく、サンプル提供なども含まれると想定される)

実際の顧客ファネルはこうだ。

現在の案件状況は左記となっており、このコンバージョンレートを当てはめて、同社の売上ポテンシャルは2025年までに40億ドル(約4,000億円)存在するという。

出所)同社投資家向け説明資料より作成

(2) 現在の受注予測では多くが非自動車用途

なお、同社の見立てによると、現時点での米国におけるLiDARの市場ポテンシャルは以下のようになっている。

 産業向け ・・・ 29m$
 スマートインフラストラクチャ ・・・ 68m$
 ロボティクス ・・・ 18m$
 自動車 ・・・ 9m$

上記を見るとわかるが、注目されている自動車向けはまだ市場が小さく、直近で最もポテンシャルがあるのがスマートインフラストラクチャ用途であるという。

同社は投資家向け事業計画書の中で、2020~2025年までの売上予測において、最大で85%を非自動車が占めるとしている。

(3) 既存LiDARプレーヤーとの違い

同社は事業計画書の中で、Velodyne、Luminar、AEVA、InnobizのLiDARプレーヤーとの違いについて言及している。同社によると、これらの既存プレーヤーは自動車分野にフォーカスしており、非自動車分においては同社が優位としている。(なお、他にも競合は効率が悪い半導体プロセスであり、まだ商品化されていない将来の製品に事業計画の多くを依存している、等の指摘をしているが、ややエビデンスが弱い言及)

(4) 今後の製品ローンチ予定

詳細は明かされていないが、同社はCMOSチップセットについて開発を続けており、第一世代は130nm CMOS(2017年)、第二世代は40nm CMOS(2019年)となっている。そして、今回の投資家向け説明資料で、第三世代のローンチを2021年に狙っていることを言及している。なお、この第三世代のCMOSを使うことで、検出範囲×解像度を大きく上げることを想定しているようだ。

LiDARベンチャーがSPAC上場を行うのは5社目

今回のOusterの発表により、LiDARベンチャーでSPAC上場を行うと発表をしたのは、Velodyne、Luminar、Innobiz、AEVAの4社に加えて、5社目となる。

SPAC上場を行うと数百億円超という巨額の規模の資金を動くことになると想定されており、LiDARの開発が増々加速することになる。


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


ー 技術アナリストの目 -
LiDARでSPAC上場を行うと発表したのが5社目ということであるが、ものすごいスピード感で業界が動いている。2021年は巨額の資金がLiDARの開発に投じられ、増々新しい動きが出てくるだろう。ただし、各社ともに投資家向けの説明資料では、今後5年間で大きな売上になるということをアピールしているが、一方で直近は自動車向けLiDARの市場は限定的だ。やや自動車マーケットにより左右される部分が大きく、その意味で非自動車向けが強いOusterは、顧客ポートフォリオを分散させることで、リスク低減をしているように見える(ただし自動車向けで競合と比較し、遅れを取る可能性もある)。

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