マシンビジョンは従来から様々なプレーヤーが取り組んできたため、後発勢にとってはもはや参入しにくい領域だ。しかし、そうした中でも優れた特徴で戦うベンチャー企業がいる。それがRecogniだ。

自動運転マシンビジョンを開発するRecogniとは

Recogniの創業者はシリアルアントレプレナーで半導体やシステム業界に精通しており、2017年に同社を創業した。BMW i VenturesやToyota AI Ventures、Faureciaなどの自動車大手OEM・Tier1プレーヤーが出資をしている、隠れた注目企業だ。

同社のマシンビジョンプラットフォームは、独自のカスタムASICとディープラーニングで構成され、エントリーレベルのL2+から完全自動運転L5までの自動運転車向けに設計されている。

低電力・リアルタイム処理が強い

同社のシステムは、ピクセルレベルでパッシブ立体深度を抽出する、オブジェクト認識専用に構築された多眼カメラシステムアーキテクチャによって構成されている。長距離の小さな物体を検出可能な高解像度イメージングを実現しているという。

また、困難な環境下における精度、強力なエッジによるリアルタイム処理も特徴だ。毎秒60フレームで8Mピクセルを超える画像で動作し、オブジェクトを認識(検出、セグメント化、分類)し、深度センサー情報をオブジェクトに融合し、数ミリ秒以内にアウトプットする。 特に同社に出資している投資家からは、「低電力(高効率)でエッジ処理がリアルタイムに可能」という点が評価されている。

これは、今後の車の自動運転化・電動化に向けて重要となるようだ。自動運転においては膨大なデータをエッジでリアルタイム処理することが求められる。また、車両は電動化の方向に向かっており、消費電力はEVの航続距離に影響を与えることにもつながる。同社のシステムは100TOPSの処理をわずか1ワットの電力消費量で実現する。それでいて、200m離れた信号を確認し、迅速に正しく把握できる。そのため、EVの航続距離に影響を与えることなく、システムがリアルタイム計算処理に集中できるようにするには同社の技術が必要という。(同社は市場に出回っているソリューションは1ワット75TOPSの障壁を超えるのが難しいと主張している)

現在はシリーズAが完了しているフェーズ

Recogniは、直近では2019年7月にシリーズAで25m$を調達している。同社の主要投資家にはGreatPoint Ventures、Plug and PlayなどのVCやアクセラレーター、Toyota AI Ventures、BMW i Ventures、Fluxunit(照明メーカーOSRAMのCVC)、Faureciaまで、CVCや事業会社も出資を行っている。


ー 技術アナリストの目 -
Algoluxなどもそうであるが、この1~2年で資金調達を行い注目されているマシンビジョンベンチャーがいくつか存在している。古くから取り組まれており、プレーヤーも多いマシンビジョンであるが、自動運転向けのシステムとしてはまだこれからも技術競争が行われるため、後発勢がポジションを確保する可能性はある。Recogniだけでなく、他の企業も含めて引き続き注視したい。