中国の新興EVメーカーのNIO(蔚来汽車)が、EV高級セダンET7について、NIO 2020(2021年1月9日)で発表した。同社の3時間に及ぶそのプレゼンテーション(大部分はライブ)では、固体電池や最新LiDARなど様々な最新技術が触れられている。

同社公開のYoutubeへの直リンク

参考)NIOの全体像を理解するのはこちらもおススメ

ハイスペックにこだわったET7 固体電池による150kwhのオプション

注)記載内容についての補足(1/22)
記事中で元々全固体電池と記載しておりましたが、プレゼン内ではSolid-State Batteryとしか言及されておらず、いくつかのメディアでも厳密には全固体ではななく電解質は液体状の半固体電池なのではないか、と報じられています。そのため、記事中は固体電池で修正をさせていただきました。いずれにせよ、まだ詳細は明らかにされていないため、また続報が出ましたら、当メディアでも記事で続報させていただきます。

CEOのWilliam Liからプレゼンテーションの中で触れられたのは、固体電池の採用についてだ。William氏のコメントを見てみたい。

我々は、電池パックの交換ステーションの拡充だけでなく、フレキシブルなバッテリーアップグレードのサポートを提供する。同じ形・サイズを保ったまま、我々は毎年20%の電池容量を実現してきた。(2018年:70kWh → 2019年:84kWh → 2020年:100kWh)

先月には100kWhの電池パックをローンチしたばかりだ。電池技術が進化するにつれて、我々はより高い目標を自身に課した。これが、150kWhだ。そして我々は最も先進的な技術として、固体電池を採用することにした。電池容量を50%向上させるためだ。

NIO 2020 William Li氏のプレゼンテーションより

上記の様に、固体電池を使ったパッケージはET7に標準装備されるのではなく、あくまでオプションという形で提供されるようである。

今回の固体電池では、まだ概要しか明かされていないが、無機リチウムプレドープSi/Cアノードや、ナノコーティングNiウルトラリッチカソードなどの最新技術が使われているという。そして、これは360Wh/kgのエネルギー密度を実現する。それにより、航続距離は1,000kmを超えると述べた。

同社は元々電池技術には多大な投資を行ってきたとしており、その出願された特許は300件を超えるが、今回の固体電池については自社で開発したとは一言も言っておらず、他社から調達すると見られている。CATLから供給されると考えられる、という記事もあるが現時点では不明だ。

この150kWh電池パックオプションは2022年第四四半期にローンチされると、同氏は触れている。なお、ET7自体は2022年第一四半期にローンチ予定なので、少しタイムラグがあるようだ。

高度に進化した自動運転センシングユニットAQUILAで最新LiDARも発表

同社はさらに、高度に進化した自動運転センシングユニットAQUILAについてもプレゼンテーションしている。

1つ目は高性能な自動運転用カメラである。これは8MP(800万画素)のカメラとなっており、同氏は、テスラで使われている1.2MPのカメラと、今回採用した8MPのカメラの撮像を比較し、解像度が6倍異なると強調している。

2つ目はLiDARだ。これはLiDARを不要としているテスラとはスタンスが大きく異なるが、同社は米国LiDARベンチャー企業Innovusionに出資を行っており、LiDARの共同開発を行ってきた。今回の発表で、最長500mものロングレンジの検出範囲、広角の120°水平FOV、最高分解能は0.06°×0.06°の性能が触れられている。なお、光源には現在市場で使われている900nmではなく、1,550nmを使っており、目に安全であることも強調していた。

なお、Innovusionがどのような機構のLiDARを提供するのかはプレゼンテーションでは触れられていないが、Innovusionは従来、回転ポリゴン光学アーキテクチャを使ったハイブリッドソリッドステートLiDARを開発していた。そのため、今回も同じ機構が採用されているのではないかと考えられる。

2022年第一四半期に発売なのでまだ時間がある

ET7は2022年第一四半期に発売されるが、同社は今回その価格も公表している。70kWhモデルであるが、RMB448,000(約700万円)、100kWhでRMB506,000(約800万円)となっている。ここに補助金が支給されることになる。

なお、現在から1年以上後に発売となるため、時間的には少しラグがある。実際にInnovusionのLiDARが量産ベースに載せられるのかなど、やや不確定な部分はある。また、固体電池については約2年先となっている。フォルクスワーゲンとQuantumScapeが発表した生産開始時期は2024年であり、NIOはそれより2年程度前倒しでの時間軸となっており、本当にこの時間軸でローンチできるのかは不透明な部分だろう。この不透明さもあり、オプション扱いとなっていると想定される。


ー 技術アナリストの目 -
NIOやXpengなど中国新興EVメーカーの勢いが止まらない。コンセプトカーとは違い今回の発表はコミットメントの形になるため、最新技術を活用するという中国勢の勢いと実際に巨額の投資がされるその資金力・実行力は素晴らしい。本当にこの時間軸で固体電池が実用化されるのか?というのが業界関係者の気になるところだと思うが、固体電池の取り組みについては続報を発表していくということなので、今後も引き続き注目したい。