栄養は人の健康にとって重要であるにも関わらず、まだテクノロジーがあまり入ってきていないホワイトスペースだ。栄養というのは成分が多様であり、人の食生活によってどのような栄養が足りてる・足りてないの判断でパーソナライズ性が求められる。また非侵襲なセンサーで測定することが難しいことも一因だ。

今回のCES2021では、そうしたパーソナライズ栄養管理に切り込むスタートアップがいた。ホワイトスペースに挑む栄養管理スタートアップはどのような企業か紹介したい。

ALGOCARE:パーソナライズ栄養管理IoTデバイス・アプリ

ALGOCAREは韓国ソウルで設立されたベンチャー企業だ。CES2021イノベーションアワードHonoreeを受賞した同社は、パーソナライズ栄養管理IoTデバイス・アプリを開発している。

同社のターゲットは、健康管理に関心のある40代と50代のユーザーであるようだ。これは、若い層だと健康というよりは美容などに焦点が行きがちで、健康の重要性があまり高くないため、感度が低いからであろう。

アプリ上に入力される病歴や日常生活などの個人の健康データを分析し、その人個人に必要な栄養素を算出。改善のために、4mmビーズレットタイプの錠剤で最適化された栄養素を提供する一連のシステムを構築している。

画像クレジット:ALGOCARE

最初の製品は2021年前半に発売される予定であるという。(上記は製品のイメージであるが、デザインは変更の可能性があるということであったため、注意)

同社への取材によると、個人情報のインプットはアプリ上で行われるようであり、医療データやライフスタイル・生活習慣データ、いくつかの質問への回答をアプリで入力することを想定しているという。また、髪の毛のテストや遺伝子検査、尿検査などとも連動することを想定しているということであった。

Bisu:パーソナライズ栄養管理のための自宅簡易尿検査デバイス

Bisuは2015年、東京で設立されたスタートアップ。現在は米国と東京の2拠点にオフィスを構えている。

同社はパーソナライズな栄養管理のためにバイオマーカーを数多く含む尿に着目。独自に開発したマイクロ流体テストスティックにより、自宅で尿を検査することができるシステムを開発した。

手順としては、自宅で専用のテストスティックで尿をサンプリングし、リーダーにセットすると、その場で解析が行われ、結果がスマートフォンのアプリ上に2分以内に飛ぶという、シンプルな仕組みだ。尿試験紙をDX化した、というようにも言えるだろう。

動画クレジット:Bisu(動画への直リンク)

分析可能なバイオマーカーは多岐に渡り、電解質(Na、K、Mg、Ca)、水分、ケトン、pH、尿酸となっている。例えば電解質のナトリウムとカリウムは健康にとって大事なミネラルであり、細胞の浸透圧を維持しているほか、心臓機能や筋肉機能の調節に役立っている。

こうした栄養素の状態をその場で診断し、アプリでどのくらい栄養素が足りていないのか、補うために何を食べたらよいのか、などの結果を返してくれる。

この製品はすでにβ版のテストが進行しており、2021年内にローンチされる予定であるという。


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
栄養管理は前述のようにまだブルーオーシャンの領域であり、実用化できればインパクトは大きい。栄養課題が見つかった時に、それを補うための方法が食事やサプリメントであるというのも良い。通常、こうしたソリューションで人は面倒な方法を取りたがらないが、食事に気を付けるというのは比較的取り組みやすいからだ。初期の市場形成の段階で、どれだけ健康に気を付ける特定ユーザーに刺せるかが重要になるだろう。