StoreDotがダイムラーから巨額の出資を受けて話題になったのはもう3年以上前のことだ。それからEV向けの車載電池に関する話題は同社からはあまり発表されず、資金調達の動きも途絶えており、ややステルス気味となっていた。

そのような中、2021年1月19日、同社は5分で満充電するLIBを自動車向けにサンプル出荷を開始したと発表した。

シリコンナノ粒子を負極に使ったLIB

BPやダイムラー、サムスン、TDKが出資

StoreDotは2012年にイスラエルで設立されたベンチャー企業だ。同社は従来のLIBをベースに急速充電が可能な「5分で満充電できる電池」をコンセプトに電池開発を進めてきた。

Crunchbaseのデータでは、同社は現在シリーズCを完了しており、130m$の資金を調達している。StoreDotには以前から様々な事業会社が注目をしており、シリーズAでサムスンベンチャーズが参画し、シリーズCではダイムラーとBPが参画している。また、日本のTDKも同社と戦略的提携・出資を行っていることを明らかにしている。

シリコンナノ粒子を負極に活用、周辺部材も含めて独自設計

同社公開のYoutubeへの直リンク

同社が開発する電池は、特にアノード(負極)に特徴がある。同社の表現を使うと、独自に設計された有機導電性マトリックスに、メタロイドナノ粒子(※1)を分散させて活物質が構成されている。なお、このメタロイドであるが、実際には半金属の中でもシリコンナノ粒子を使っている。

※1 メタロイドとは、一般に半金属と言われており、金属と非金属の中間の性質を示す物質を指す。よく言われる元素はSi(ケイ素)、B(ホウ素)、Ge(ゲルマニウム)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)などのことを言う。ただし、その定義はやや曖昧なものとなっている。

シリコンをナノ粒子化することによって、高い導電性を実現することができる。負極では黒鉛が使われることが多いが、理論的にはこのカーボン系に比べて大容量を実現することができる。しかし一方で、シリコンを負極材に使うと、リチウムイオンを挿入・脱離による体積膨張が大きく、充放電サイクルにおける構造的な劣化を招くために、まだEV向けではシリコンベースのアノードは実用化できていない。

同社はシリコンナノ粒子を活用するために、独自設計の自己修復有機ポリマーによる3Dバインダや、電極や電解質に添加剤を入れなど、負極周辺部材も含めて様々な工夫を行うことで、課題をクリアしようとしている。

EV向けにサンプル出荷を開始

同社は今回の発表で、第1世代の5分間充電バッテリーサンプルの提供を発表した。これまでは二輪EV向けでの5分充電の実証や、昨年ドローン向けでの5分充電の実証を発表してきたが、自動車向けでの発表は今回が初である。(ただし注意点として、今回5分でどれくらいの容量を充電することができるのか触れられていないことが挙げられる)

サンプルセルは中国の戦略的パートナーEVE Energyによって製造されており、EVE Energyの従来のリチウムイオン電池製造ラインを活用してそのまま製造できるということも発表している。

StoreDotは2021年後半にはEV用の第二世代のバッテリーセルのプロトタイプを発売する計画があることにも触れている。

(関連プレスリリースはこちら


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像についてはこちらの記事も参考。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


電池にとって重要となる、Power Dayで発表されたフォルクスワーゲンの電池ロードマップ発表の内容についても整理したのでご参考。

参考:Volkswagenが2030年までの電池ロードマップを公開、さらにEVを強化へ


ー 技術アナリストの目 -
元々同社の計画は、2021年にはミドルボリュームでEV向けに電池を出荷するというマイルストンであったことも触れている資料があり(※2)、現在の開発は元々想定していたものと比べると遅れていることになる。やはりEV向けでシリコン負極を実用化することは簡単ではなかったということであろう。ただし、今年後半に発表されるという第二世代のバッテリーセルがどのような仕上がりになるか、それ次第とも言える。同社は前回の資金調達ラウンドから3年近くも経っているため、次の追加ラウンドを行うにはある程度公にできる結果が、年内に求められるだろう。

※2 参考資料:XFC – Extra Fast Charging Li-Ion Battery Market Review 2017