2021年1月30日、自律飛行eVTOLを開発している中国のベンチャー企業EHangが、欧州の大手資産運用会社であるCarmignacから40m$を調達したことを発表した。

EHangは2014年に中国で設立されたベンチャー企業。2019年には米国新興市場のナスダックに上場もしている。EHangは今回の資金調達で、これまで調達した金額も含めると総額132m$と推計される(Crunchbaseの金額に今回の調達額を合算した値)。

EHangの技術開発と事業開発を加速

同社が開発している2人乗りのアーバンエア輸送機EHang AAVは、最高速度130km/h、最大積載220kgの時に35kmの距離を飛行することができる。EHangは今回の調達した資金を技術開発とビジネスデベロップメントに活用するという。他社はパイロットの搭乗を前提とするが、EHangはパイロット無しの完全自律飛行をいきなり実現しようとしているところに特徴がある。

同社公開のYoutubeへの直リンク

EHangは中国に留まらず、世界各国で実証フライトの動きを加速させている

EHangはもはや中国に留まらず世界中で実証フライトを実施・計画している。以下がわずかこの2-3か月でEHangが行った動きだ。

■ 欧州連合のHorizon2020下のAMU-LEDプロジェクトに参画(2021年1月)
ヨーロッパ最大のデモンストレーションとなるプロジェクト。スペイン、英国、オランダの3か国で実証を予定。エアバスやボーイングなどの世界17企業・機関が参加している。

■ 中国広東省珠海南東部で空中観光サービス向けの実証開始(2021年1月)
横琴新区(経済特区)の天琴公園で旅客輸送飛行を実施。合計36人の乗客が自律型EH216に搭乗して飛行し、空中観光のデモンストレーションを実施した。広東-香港-マカオグレーターベイエリアでの事業開発を狙う。

■ 中国広東省の観光不動産PJTで空中観光・メディアショーの準備開始(2021年1月)
中国広東省の人気ツアー目的地である肇慶にあるパートナーの観光不動産プロジェクト(フォレストレイク)で展開される空中観光プログラムと空中メディアショーを計画。今後、Greenland Hong Kongと共同で、より多くの都市でEH216AAVを使用した空中観光サービスを提供する予定という。

■ オーストリア領全域で長期試験飛行許可を取得(2020年12月)
オーストリアの民間航空局から、EH216 AAVの試験飛行許可を受領したことを発表。この認可を得るために、2020年11月にはテスト飛行を実施し、フライトリスク評価を受けている。

■ 韓国3か所でのテストフライトを完了(2020年11月)
韓国のソウル、大邱広域市、済州島の3か所でテストフライトを完了。特にソウルのような人口密集地域でのフライトは韓国初であるという。

今回の資金調達を受けて、同社の活動はさらに加速すると思われる。

(今回の参考プレスリリースはこちら


EHang含む世界の有力空飛ぶ車ベンチャーの動向を全体像をまとめている。有力プレーヤーを一気に把握するのは下記から。

参考記事:(特集) 空飛ぶ車・エアモビリティの世界ベンチャー企業動向


ー 技術アナリストの目 -
このEHangの動きの速さは凄まじい。2-3年前はBellやVorocopter、Lilliumらが目立つ動きを見せていたが、EHangは今では世界中の実証プロジェクトに顔を出し、次々とテストフライトに向けた準備を行う。世界でのエアモビリティの事業開発はすでに始まっていることを感じさせる(ただし実際にサービスインした時にマネタイズできるのか?という疑問はあるが)。日本でも官民一体となって大阪万博などでのサービス実証を目指す動きがあるが、欧米や中国、シンガポールといった海外の動きに比べると遅れている。日本市場が立ち上がる頃には欧米や中国を中心に関連プレーヤーが先立ってサービスを開始し、日本プレーヤーが日本市場に留まらざるを得なくなることが危惧される。SkyDriveなどの有望な日本企業の動きを加速するための政府機関などの規制改革や支援の動きの加速も期待したい。