LiDARで世界最大手の米国企業Velodyneが、中国のトラック向け自動運転技術を開発するトランクテック(北京主線科技:Beijing Trunk Technology)と戦略的提携を行うと、2021年1月21日に発表した。

中国の物流市場向け自動運転トラックの開発

両社は今回の提携により、中国の物流市場向け自動運転トラックの開発を行う。今回の提携により、次世代の無人トラックの車両の大量生産を加速することを狙う。

自動運転レベル4トラックを開発するトランクテック

トランクテックは2017年に設立されたばかりのベンチャー企業で、港湾、高速道路、ロジスティクスパーク、都市流通などの多様なロジスティクスシナリオでの自動運転を可能にする技術を開発している。同社独自の強力な無人ハードウエア/ソフトウエアシステムをベースにSAEレベル4の無人トラックを自主開発した。

2019年にはドイツの自動車Tier1ボッシュ傘下のRobert Bosch Venture CapitalとGLPをリードインベスターとして、電気自動車を開発するNIOがスポンサーのNIO Capitalも参画するシリーズAラウンドを実施。ちなみに、ボッシュとの付き合いは2018年から始まっており、ボッシュが中国で実施したアクセラレーションプログラム「Artificial Intelligence in Cars」で受賞したことから始まっている。

画像クレジット:Trunk.Tech

2018年に中国で初めて営業路上試験免許を獲得し、多くの国内高速道路で多数の実際の路上試験を実施し、中国国内初の完全自動高速車両試験を完了。2019年には様々な国のR&Dプロジェクトを獲得し、中国で最初の無人トラック技術企業として路上通行の認定を受けている。

VelodyneのLiDARを正式採用

これまでもトランクテックはVelodyneのLiDARを採用してきた。

自動運転トラックのコアセンサーハードウェアとしてVelodyneのLiDAR(Ultra Puck™、Puck™、Velarray H800ソリッドステートレーダーを含む)を使用している。このVelodyne製のLiDARを搭載し、過去数年間で数十台の無人トラックに配備している。

なお、無人トラックに利用されているそれぞれの製品の概要は以下のようになっている。

Ultra Puck™:クラス最高性能の長距離用ライダー

  • 検出範囲 最大200m
  • 水平FOV 360° × 垂直FOV 40°
  • クラス最高の垂直解像度 0.33°

Puck™:中距離用ライダー

  • 検出範囲 最大100m
  • 水平FOV 360° × 垂直FOV 30°
  • コンパクトで多用途、低価格

Velarray H800:ソリッドステートライダー

  • 検出範囲 最大200m(高速道路での使用を想定)
  • 水平FOV 120° × 垂直FOV 16°
  • 自動車グレードのために特別に設計されている

トランクテックは、これまで使用してきたVelodyne製のライダーの品質、性能、量産能力を評価し、Velodyneを今後の自動運転トラック開発のための正式パートナーとすることになった。

2021年に数百台の無人トラックを生産予定

トランクテックは2021年内に数百台の無人トラックを生産する計画があることも発表している。無人トラックの生産体制構築に向けて、同社はSinotruk、WABCO、Weilai Automobile、Geely Commercial Vehicleなどが共同で大量生産を支援し、運用側では、FuyouTrucksと共同でトラック運用を行うことを開始した。

(今回のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
日本においても自動運転トラックの実証は昨年あたりから徐々に始まっているが、かなり限定された固定ルートでの実証でしかなく、すでに天津港で25台の運航試験を完了させたり、高速道路で多数の実証を行っている中国が実証面では先行している。2021年に数百台規模の無人トラックが市場に出るとなると、トランクテックが最初にターゲットとしている港湾で本格的な商用運用が始まるとも見られる。自動運転の領域は乗用車・ロボタクシーのみならず、商用トラックにおいても加速している。

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