Googleは元々は医療寄りで研究開発をしてきた

Googleは従来、主には医療・ヘルスケアの領域での研究開発に注力してきた。

Google Heathのプロジェクトは2000年代に健康情報を一元化するためにスタートし、一度はとん挫をしている。その後、Google Xの一部門から独立してGoogle Verily(現Alphabet Verily)が立ち上がり、このVerilyではディープラーニングなどのアルゴリズムを使った心房細動検出や、パーキンソン病に関する研究、スマートコンタクトレンズの開発(現在は終了)など、医療関連技術の研究が行われている。

Fitbitの買収も含め健康領域を強化

一方で健康領域であるが、Googleはスマートウォッチ向けOSとしてWear OS(前Android Wear)を2014年頃からローンチし、いわゆるフィットネス領域でも事業展開を開始している。フィットネス領域のアプリとしてGoogle Fitもローンチし、健康領域のプラットフォームを指向している。しかし、スマートウォッチ領域はレッドオーシャン化していることもあり、必ずしもうまく行っているとは言えない状況、とも市場で言われてきた。

そのような中で、Googleが約2,180億円のFitbitの買収を完了させたのがつい先月である。そしてFitbitの買収後に次の健康領域における発表を行った。それが、GoogleのスマートフォンであるPixelのカメラを使って、Google Fitのアプリを通して心拍数と呼吸を測定するという機能である。

iPPGで心拍数と呼吸数を測定

呼吸数を測定するには、スマートフォンの正面カメラを視野に入れて頭と胴体上部を配置し、正常に呼吸することでその胸の動き等の動作から計測する。また心拍数は、後ろ向きのカメラレンズに指を置くことで計測する。

これはいわゆるiPPG(Imaging Photoplethysmography:イメージングフォトプレチスモグラフィー)と言われる技術だ。呼吸数を測定する胸の動きや心拍数に対する指の色の微妙な変化など、ピクセルレベルで小さな物理信号を追跡し、計測する技術である。

下記のGoogle Healthの紹介動画の中でも触れられているが、この技術は呼吸数でいくと通常1分間に12~14回の呼吸数に対して、今回発表した技術の精度は、1分間の呼吸数で1回の差が出る程度であるという。また、心拍数においては通常1分間に60回~100回の範囲であるが、技術の精度は±2%であるようだ。

同社公開のGoogle Healthの活動内容についての紹介動画

なお、今回まずはPixelスマートフォンから適用されるようであるが、順次アンドロイドのスマートフォンのGoogle Fitで使えるように拡大していく予定だ。

(今回の参考となるプレスリリースはこちら

(参考)以下は類似技術を開発しているベンチャー企業の記事:


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
現段階では心拍数と呼吸を測定できるのみであり、これだけでは特に価値はない。こうした生体パラメーターと病気の予測や検知などと結びつけることができて初めて価値が出るものである点は注意したい。しかし、Googleの得意領域はこの後のデータ解析であり、先行しているのは上記の参考として挙げた記事でも特集しているCardiogramやBinahである。Googleも恐らくこうした方向へ研究開発を進めていくと想定されるが、こうした技術が確立されると、本格的に健康領域でのOSとしての価値が高まっていくだろう。