中国の自動運転システムを開発しているAutoXが、2021年1月28日、深圳でロボタクシーのパイロットプログラムを開始し、その様子を動画で公開した。一般市民がアプリを通して利用可能なロボタクシーということで、話題を呼んでいる。

同社によると、中国における一般の道路においてドライバーの乗車無しで、一般車両と変わらない速度で無人運転実証実験を実施したのは同社が初めてという。

深圳で開始されたロボタクシー実証

設立してわずか5年で一気に成長している完全自動運転スタートアップ

AutoXは2016年に米国シリコンバレーで設立された自動運転システムを開発するベンチャー企業。アリババや、中国乗用車大手の上海汽車、中国商用車大手の東風汽車も出資をしているAutoXは、2019年6月20日、AutoXはカリフォルニア州ロボタクシーサービス運営許可を取得し、同州初めての一般顧客向けサービスを開始している。今回、深圳においても一般顧客向けのロボタクシーサービスを開始した。

Crunchbaseによると、同社はシリーズBまで完了しており、これまでの資金調達総額は160m$を超える。Pony.aiやWeRideなど、他の中国自動運転スタートアップと比べるとやや資金調達は遅れているが、自動運転システムの実証の動きは非常に活発だ。

同社公開のYoutubeへの直リンク
ロボタクシー乗客を迎えに来て、目的地に降ろすまでの様子が放送されている

深圳市におけるロボタクシーの様子

今回のパイロットプログラムは完全ドライバーレスの自動運転ロボタクシーとなっており、運転席には誰も載っていない。後部座席にレポーターが1名乗り、助手席にも誰も乗っていない(実際には撮影のためのカメラマンがいるようであるが、設定としては乗員1名だけで乗ることを想定している)。

この車体自体は昨年2020年に提携を発表したフィアットクライスラーのパシフィカミニバンで、高解像度カメラと長距離レーダー、高精細LiDARを搭載している。AutoXは当初は高解像度カメラと長距離レーダーのみで、LiDARは使わない方針という報道もあった。しかし、やはりシステム冗長性・安全性を踏まえて現在ではLiDARを使う方針としているようであり、CES2020でも中国のLiDARベンチャーであるRobosenseと大手ドローン企業のDJI子会社であるLIVOXと共同で発表を行っていた。(注:現行の走行実験車両にRobosenseとLIVOXのLiDARが搭載されているかは不明)

アプリで車両の配車予約を行い、利用を開始する。そして、動画内でもUターンして乗客を迎えに来るシーンが見て取れる。走行中に自転車が車の前を横切るシーンや歩行者が信号のない横断歩道を渡るシーンがあるが、スムーズに検知し、減速して停車している様子が伺える。

また、他にも道幅の狭い道路での進路変更や、大きめの交差点での左折において、目の前の大トラックが左折するのを待ち、スムーズに左折タスクを行っている。動画のシーンを見る限りは、安全なドライバーの運転そのものだろう。そして、車内はカスタマーセンターと繋がることができ、オペレーターと会話をすることも可能だ。最後に、このロボタクシーは目的地まで到着し、次の乗客を迎えに行く。

当然、動画は広告目的で流されているため、スムーズであることは当然であるが、一連の走行の流れは何の問題もなく、自然にオペレーションが進んでいく様子が伺える。

中国4都市、米国1都市でロボタクシーの実験中

現在AutoXは中国4都市、米国1都市で自動運転車両の走行実験を行っている。

カリフォルニア州で世界2番目の無人自動運転の実証走行許可

カリフォルニア州においては、2017年に中国系ベンチャーとして初、カリフォルニア州当局から公道自動運転許可を取得し、自動運転デリバリーサービスを開始。また2019年にはロボタクシーサービス運営許可を取得している。2020年にはカリフォルニア州において世界で2番目となる完全無人での自動運転実証走行の許可も得ている。

粤港澳大湾区、広州市、上海市、深圳市で実証走行

中国においては、中国初となる、粤港澳大湾区(広東省、香港、マカオ都市圏エリア)の公道自動運転許可を取得したのが2018年のことであり、2019年には広州市当局からも公道自動運転許可を取得。深圳市でも初となる正式な公道試験走行免許を取得した。

そして2020年ついに上海市でアプリを使ったロボタクシー配車サービスを開始。すでに有料での一般公開運営が開始されている。

(AutoXのウェブページはこちら


自動運転ベンチャーの最新動向がわかるカリフォルニア州の走行距離レポートをまとめているためこちらもご参考。

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ー 技術アナリストの目 -
自動運転走行において難易度が高いと言われる市街地での走行をスムーズにこなしている様子が動画から伺える。特に中国の市街地においては米国に比べて歩行者や自転車なども多く、それでもこれまでの3年間程度の実証で無事故であるという。今回の動きは、中国における完全無人自動運転の始まりとも言うことができ、深圳、広州、上海を中心として、今後実証が加速していくことが見込まれる。特に、実証という位置づけではあるが、一般向けの有償サービスとして実際にサービス提供が始まっているということが大変意義深い。