米国のカリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)が、2021年2月4日、Institute for Future Healthという組織を立ち上げたと発表した。この組織は、ウェアラブルデバイスやスマートフォンなどを活用し、より個人にパーソナライズされたヘルスケアモデルの構築に取り組むために、研究や臨床研究を行うもの。

パーソナライズされたヘルスケアモデルを研究する機関

では、このInstitute for Future Healthという組織はどのような組織なのか見ていこう。この組織のミッションについて、研究所長と副所長はこう言及している。

「Institute for Future Healthの使命は、テクノロジーを活用した、パーソナライズされたタイムリーなアドバイスにより、人々が健康と生活の質をよりよく管理できるようにすることです」と、研究副所長のPramod Khargonekar氏は述べている。

また、同機関の研究所長であり、コンピューターサイエンスの教授であるDonald Bren氏はリリースでこう述べている。「私たちのアプローチは、個人に影響を与えるライフスタイルと環境要因を理解し、それらを使用して、個人の目標を達成するために健康状態を操作する個人モデルを構築することです。これには、実際の状況でリアルタイムのライフスタイルと環境のデータを収集する必要があります。このアプローチでは、最初に調査を行ってから翻訳するのではなく、調査と翻訳を同時に行うためのインフラストラクチャを構築する必要があります。」
注)上記で言う翻訳とは、原文では”translation”と言っているためそのままの日本語にしているが、データの解釈という意味が適切

パートナーには世界の名門大学や研究機関がずらりと並ぶ。米国のスタンフォード大学やSRI、スイスのEPFL、フィンランドのTurku大学、中国の研究機関である中国科学院と清華大学、日本の東京大学も入っている。また医療・ヘルスケア関連の業界団体も多数参加している。産業界のパートナーはまだ数が多く無いようであるが、大きい企業でいくとスマートウォッチのHuamiとSamsungが入っている

興味深いプロジェクトの例

ではいくつかの興味深いプロジェクトについて見ていこう。例えば以下のような研究プロジェクトが行われているようだ。この機関では、現在トータルで40のプロジェクトが進行している。

  • UNITE
    母親に焦点をあてたライフログやテクノロジーを使って、コミュニティに働きかけるプロジェクト
  • DEPRESSION DETECTION AND HELP USING PERSONICLE
    青少年のストレス軽減のためのストレスモニタリングと効果的なストレス管理技術
  • PERSONICLE OPEN SOURCE
    Fitbitなどのウェアラブルデバイスを使って日常のデータを収集する。場所、周囲光、電話の使用状況などのモバイルデバイス固有の測定値、および心拍数、アクティビティレベル、睡眠などの測定値を収集してデータ処理することで、医療システムで使用される可能性のあるアクティビティやイベントを作成する。
  • HEALTH STATE ESTIMATION
    特定の病気ではなく、安価で、低精度であるが一般的なウェアラブルセンサーを使用して健康状態を追跡し、状態評価を行う。
  • FETAL AND MATERNAL CARE
    IoTベースのウェアラブルデバイスと、バイオエレクトロニクスとデータサイエンスの最先端技術を活用して、出生前、分娩前、分娩中の初期の胎児と母体のケアを改善する。

(今回のプレスリリースはこちら

(Institute for Future Healthのウェブサイトはこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
消費者が購入できるような一般的なウェアラブルデバイスやスマートフォンなどのモバイルデバイスは、数多くのデータが取得できる一方で、従来ヘルスケアシーンで活用できていない。特に大規模に、精度の良いデータを取得することは難しく、またそうしたビッグデータを個人のパーソナルなモデルへ落とし込むことも非常にチャレンジングだ。こうした研究プロジェクトが立ち上がることはウェアラブルの価値を高める上で大変重要だ。(HuamiとSamsungが参加していることも注目ポイントである)