トイレシートを通して在宅医療モニタリングを実現することを目指しているベンチャー企業のCasanaがシリーズAで14m$を調達したことを、2021年2月3日発表した。今回のラウンドで、これまで調達した資金の総額は16.6m$になるという。

今回の資金調達ラウンドは、General Catalystとthe Outsiders Fundがリードインベスターとして主導し、トイレットシートの大手製造企業でありシードステージから同社に出資を行っているBemis Manufacturing Companyも参画している。

ECGやSPO2が測定可能なトイレシート

Casanaは2018年に米国で設立されたばかりのベンチャー企業。ロチェスター工科大学で家庭での健康管理の課題を解決するためのセンサーを研究していたNicholas Conn博士によって設立された。

Casanaは「The Heart SeatTM」と呼ばれるバイタルデータを取得できるトイレシートを開発している。これは、臨床グレードの心電を測定するためのセンサ、心電図(BCG)を測るためのセンサ、SPO2を測定するためのPPGセンサを搭載しており、測定したデータをサーバーへ飛ばし、データをモニタリングできるようにする。心拍数、血圧、血中酸素濃度、心拍出量などをモニタリングすることができる。なお、このスマートシートは、充電せずに数年稼働することができるという。

同社の着眼点は、便座は動くことは無い静的な環境であることから、デバイスの着脱も不要であり、生体データをモニタリングするのに最適な場所であるとしている。毎日トイレに行くため、自然な形で心臓状態をモニタリングすることができる。

臨床グレードの精度

同社はその測定精度についても論文を発表している。2018年にJMIR Mhealth Uhealthで発表された論文(※1)によると、25人の健康な被験者と29人の心不全を持つ被験者において、12誘導臨床グレードECGと心電センサの精度について比較した結果、全ての臀部心電図測定で臨床グレードの精度が達成されたという。

また、別の論文(※2)においても便座に基づく血圧と末梢血酸素飽和度の推定値を、8週間にわたって18人の被験者の医療グレードのバイタルサインモニターと比較した結果、すべてのシート測定で臨床グレードの精度が達成されたという。

同社は現在、FDAの認可を申請中となっている。


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
トイレという必ず人が毎日行き、用を足す、安定した測定した環境において、こうした臨床グレードでの精度が実現できているというのは大変興味深い。今後、こうしたスマートトイレで測定したデータを解析して、何かしらの病気の予兆検知や、一度入院した人の予後のモニタリングなどで付加価値づけが行われていくだろう。TOTOもCES2021でウェルネストイレのコンセプトを初披露したが、トイレでも健康・ヘルスケアの付加価値をつけることができる方向に技術が動いている。

参考文献:

※1 Conn NJ, Schwarz KQ, Borkholder DA
Nontraditional Electrocardiogram and Algorithms for Inconspicuous In-Home Monitoring: Comparative Study
JMIR Mhealth Uhealth 2018;6(5):e120

※2 Conn NJ, Schwarz KQ, Borkholder DA
In-Home Cardiovascular Monitoring System for Heart Failure: Comparative Study
JMIR Mhealth Uhealth 2019;7(1):e12419