2021年1月19日、ゼネラルモーターズとその子会社の自動運転システムを開発するCruiseが、マイクロソフトが既存投資家のGM、ホンダ、その他機関投資家と協力して20億ドル(約2,000億円)の資金調達ラウンドに参加したと発表した。

Cruiseによる20億ドルの新規資金調達

Cruiseが前回資金調達を行ったのは2019年3月で、ソフトバンクビジョンファンドやホンダ、ゼネラルモーターズ等から12億ドルの調達であった。その前回ラウンドから約2年、今回は20億ドルというさらに巨額の金額の調達となっている。

Crunchbaseによると、今回の資金調達により、Cruiseがこれまでに調達した資金総額は73億ドル(約7,300億円)になる。

今回の出資にあたり、GM、Cruise、マイクロソフトの3社は長期的な戦略的提携関係を締結したと発表。Cruiseはマイクロソフトのクラウド及びエッジコンピューティングプラットフォームであるAzureを活用して、独自の自律型車両ソリューションを大規模に商品化する。

GMは、優先的なパブリッククラウドプロバイダーとしてのマイクロソフトと協力し、協業、ストレージ、人工知能、機械学習機能などのデジタル化イニシアチブを加速する。GMは、デジタルサプライチェーン全体の運用を合理化し、生産性を高め、新しいモビリティサービスを顧客に迅速に提供するために、マイクロソフトとの機会を模索するとも発表。Cruiseの自動運転に留まらず、ものづくりのDX全般においてマイクロソフトとの協業を推進することが伺える。

Cruiseの自動運転開発

Cruiseは米国サンフランシスコに拠点を置く自動運転ベンチャー企業である。2013年に設立され、2016年にはゼネラルモーターズが買収。GMの自動運転開発の中核を担っている。

Cruiseは現在、サンフランシスコ市内で走行実験を繰り返しており、これまでに200万マイル(320万km)の走行を行っている。2020年10月にはカリフォルニア州から、ドライバーの搭乗無しでの自動運転車の走行許可を得ている。

同社公開のYoutube
サンフランシスコの街中をスムーズに走行している

なお、Cruiseは2017年にLiDARベンチャーのStrobeを買収し、ゼネラルモーターズは2020年にレーダーベンチャーのAstyxを買収している。

参考記事:

CNBCの報道では、Cruiseのスポークスマンによると、同社はLiDARについて独自の自動運転センサーテクノロジーを社内で開発し続けているだけでなく、「市場から何がもたらされるかを監視している」ということである。LiDARのプレーヤーは多く、技術開発の動きも早いため、内製にこだわらず、必要なら技術を調達するというスタンスが伺える。(ただし上記の過去記事にもあるように、2020年の時点ではまだVelodyneなどの外部サプライヤに頼っているようだ)

マイクロソフトによる自動車分野への注力

マイクロソフトは近年、コネクテッドカー分野に力を入れてきた。すでにコネクテッドカーの領域では2019年にフォルクスワーゲンのコネクテッドカー向けのクラウド基盤にMicrosoft Azureを採用。また、日産・ルノー・三菱自動車はMicrosoft Azureを ベースとした「アライアンス インテリジェント クラウド」を立ち上げている。他にもAzureを利用するのはダイムラーやBMW、トヨタも含まれる。

こうしたコネクテッドカー領域が先に盛り上がる一方で、自動運転分野においても重要性を増している。自動運転は1日の走行で4テラバイトにも上るという。今後自動運転車両の拡大により、データ量はさらに膨大に増加していくことが見込まれる。

(今回のプレスリリースはこちら


自動運転ベンチャーの最新動向がわかるカリフォルニア州の走行距離レポートをまとめているためこちらもご参考。

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ー 技術アナリストの目 -
自動車におけるクラウドサービス領域も非常に盛り上がっている。AmazonのAWS、マイクロソフトのAzure、GoogleのGCPと、クラウドサービスが自動運転とコネクテッド領域と結びついて、今後大きな新しい市場を形成していくと想定されている。また、この巨大市場を狙って、中国系のHuaweiCloudやAlibaba Cloud、Tencent Cloudも参戦。車両におけるデータプラットフォーマーの競争が加速する。