イスラエルのシードステージベンチャー企業であるRadSee Technologiesが、自動運転・ADAS向けの4Dイメージングレーダーで、大幅にコストを低減した新製品を発表した。

また合わせて、米国新興市場ナスダックにも上場をしているイスラエルのRADA Electronic Industriesが、RadSeeにシードステージで3m$(約3億円)の出資を行ったことも発表した。RADAの決算発表でも言及されているが、RADAは今回の出資によって12%分の株式を保有することになるという。

4Dイメージングレーダーを開発したRadSeeとは?

RadSeeは2014年にイスラエルのテルアビブで設立されたベンチャー企業。まだシードステージであり、これまでステルスで開発を続けてきたため、公開されている情報はほとんどないが、同社のCSO(Chief Science Officer)のDani Raphaeli氏はテルアビブ大学の准教授であり、技術の出自はテルアビブ大学にあると考えられる。

同社が開発した4Dイメージングレーダーは以下の特徴を持つとされている。

  • スケーラブル、ポータブル、柔軟性により、市場投入までの時間を短縮
  • プロセッサに依存しない、自動車グレードのコンポーネント実装(競合するASICアプローチとは異なる)
  • 最大検出範囲:~400メートル
  • 角度分解能 :0.25°
  • FOV    :120°の視野での静的および動的オブジェクト検出
  • コスト   :従来ソリューションの最大1/3

注)あくまで同社の発表内容であり、実際に発揮されるスペックは不明

なお、同社の技術の特徴は、77GHzの周波数帯を利用している点は他社のミリ波レーダーでもあるものであるが、独自開発のAIアルゴリズム、特許取得済みのアンテナ設計(アンテナアレイ)、2つのレーダーチップを統合したアーキテクチャにあるとしている。

特許については同社の主張によると50以上の登録特許を保有しているとされているが、EspacenetとGoogle Patentで調査をしたところ、RadSee社としての登録は1件のみであった。多くはCSOのDani Raphaeli氏が発明者として保有していると想定される。なお、1件見つかった特許1)はアンテナアレイに関するものとなっており、従来のMIMO(送受信で複数のアンテナを使う方法)を改善するものであるようだ。

共同創設者兼CSOのDani Raphaeli博士は、次のように述べている。「業界をリードするパフォーマンスには、歴史的に高額な価格に加えて、開発の複雑さとリスクが伴います。対照的に、RadSeeのレーダー技術は、コスト、リスク、パフォーマンスの間の通常のトレードオフを排除し、77GHzレーダーの普及を初めて現実的な可能性にします。」

(今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
自動運転・ADASの前方検知用の4Dレーダーを想定しているのだと思いますが、最大400mで、FOVが120°、角度分解能が0.25°というのはかなり立派なスペックであるように感じます。一方で、どのような前提でのスペックで、また実環境で実際にこうしたスペックが出るのかは不明であり、今後の技術情報の発表を待ちたいと思います。

参考文献:

1) CN110741273 (A) – ANTENNA ARRAYS