2021年2月2日、ベイビーテックの米国ベンチャー企業であるNanitが、シリーズCラウンドで25m$を調達したことを発表した。今回新しく参画した投資家はGV(元Google Ventures)であり、既存投資家も出資を行った。

カメラベースで乳幼児の睡眠と呼吸をモニタリング

ベイビーテックという領域では、つい先日Owlet Baby CareのSPAC上場についてこちらで記事にしているが、Nanitも同じ市場で事業を展開している有名なベンチャー企業である。2016年に設立された米国ベンチャー企業であり、まだ設立されてわずか5年程度であるが、今回の資金調達によって資金調達総額は75m$になる。

Owlet Baby CareによるSPAC上場の記事はこちら:

Owlet Baby Careは靴下型のウェアラブルデバイスにより乳幼児をモニタリングするのに対して、Nanitはカメラによりモニタリングを行う。現在は、カメラからさらに領域を広げて、乳幼児をモニタリングするためのおくるみ毛布、スマートなベビーベッドシートなど多様な製品を展開している。

同社のNanit Pro Cameraでは、高度なコンピュータービジョンテクノロジーを使用し、ベビーベッド内とその周辺で起こっていることを機械学習と睡眠科学を組み合わせ、親が子供の発達について学ぶのに役立つ実用的な洞察を提供する。例えばカメラのデータを解析することで、赤ちゃんの呼吸状態をモニタリングしたり、カメラから得られるデータをアプリ上でデジタルスナップショットとして家族や遠方の親戚と共有することができる。

また、Naniが独自で開発したBreathing Wear(呼吸監視用の毛布のようなもの)は、Nanit Pro Cameraと統合され、赤ちゃんの呼吸の動きをくるんだ毛布からも安全に監視できる。また、2021年2月に発表された新しいスマートベッドシートとカメラを組み合わせることで、赤ちゃんの身長もモニタリングし、成長を追跡できるようになるという。

現在米国・カナダで急成長

同社の発表によると、今回のシリーズCの資金調達の前提として、Nanitの顧客は2倍に増え、前年比で130%を超える収益成長を遂げたという。Nanitの新しい主力製品は、今後、Amazon、ベストバイ、buybuy BABY、Pottery Barn Kids、Targetなどの主要小売店で米国とカナダの店舗に並ぶ予定となっており、いわゆるBtoCビジネスを展開している。

GVのパートナーであるFrederique Dameは、今回の出資にあたり次のように述べている。「Nanitは、人工知能とコンピュータービジョン技術を独自に使用することで、親と乳幼児のコネクテッドヘルスの進化を推進しています。Nanitが新しい親の体験を現代化し続け、有意義なデータと洞察を通じて、家族を子供の健康と安全に結び付けるのをサポートすることを楽しみにしています。」

(今回参考のプレスリリースはこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


カメラベースというアプローチということで、日本においてはややプライバシーの観点から嫌煙されがちなモニタリング手法ですが、先行して海外ではマネタイズに筋道が付き始めています。ベイビーテックの領域では、高度なテクノロジー主導というよりは、しっかりと乳幼児や妊婦に焦点をあてたユーザーのニーズ・課題を捕え、優れたユーザー体験を構築することが大事で、海外ベンチャーはその点が非常に優れていると感じます。一方で、日本のベンチャー企業もこの領域で非常に頑張っており、今年CES2021でイノベーションアワードを受賞したファーストアセントのように、日本でも製品・技術が出つつあります。日本でのベイビーテック市場の創出も含めて、今後モニタリングしていきたい領域です。