Joby Aviationは、特定目的買収会社のReinvent Technology Partnersと正式な企業合併契約を締結し、SPACによるIPOを行うと2021年2月24日に発表した。合併後の会社はJoby Aviationの名前が引き継がれ、ニューヨーク証券取引所に上場する予定という。

2021年第二四半期までに取引を完了し、1,600億円を調達

JobyとReinventは、双方の取締役会で2021年第二四半期までに完了する予定であるこの取引を満場一致で承認。合併後の会社の予想される時価総額は66億ドル(約6,985億円)になるという。

またJobyは、Reinventの信託預金から現金最大690m$と、1株あたり10$の普通株式の私募(※1)により835m$の、合わせて1,525m$(約1,614億円)の現金収入を得ることになる。また、7,500万ドルの転換社債を普通株式に転換する。

(補足 ※1)株式や公社債などの有価証券を発行する際、特定少数の投資家を対象に募集すること。通常は50人未満の投資家を対象する場合をいいますが、証券会社や銀行、保険会社などの適格機関投資家のみを対象にする場合は、人数に関係なく私募として扱われます。

大和証券ウェブサイト、金融・証券用語解説より
同社公開の動画への直リンク
今回のSPAC上場発表に合わせてCEOから発信したコメント

Joby Aviationは現在、空飛ぶ車・パーソナルエアモビリティの領域では先陣を切っている。これまでの総資金調達額はCrunchbaseによると796m$(約800億円)となっており、トヨタが620m$ものシリーズCを主導したことで日本でも一躍有名となった。トヨタのエンジニアは、eVTOLの製造工場のレイアウトや製造プロセスの開発などでJobyを支援している。このトヨタと共同で設計された45万平方フィートの製造施設の建設が、2021年後半に開始される予定だ。

なお、今回のIPO後も、既存株主は合併会社の過半数の所有者であり続けることになる。

今回の発表において、CEOのJoeBen Bevirt氏はこう述べている。「過去10年間、私たちは1つのタスク、つまりこの市場に最適なテクノロジーの開発に焦点を当ててきました。しかし、私たちの長期的なビジョンは常にグローバルな旅客サービスを構築することであり、貴重な地球の保護に貢献しながら、10億人の人々が毎日1時間を節約できることを支援しようとしています。本日の取引により、次の10年を見据えることができ、ビジョンを実現するために必要なリソースが提供されます。私たちの最初の会議以来、Reinventが世界に前向きで長期的な影響を与えたいという私たちの基本的な願望を共有していることは明らかであり、私たちは彼らを船に迎えることにこれ以上興奮することはできませんでした。」

今回のJobyが合わせて発表した投資家向け説明資料においても、いくつかの新情報が明らかとなっている。

ロサンゼルス中心地から近くのビーチへ移動する場合、例えばサンタモニカの海岸まで6分、ロングビーチまで12分でフライトできると言及している。これは自動車での移動時間と比較すると、5倍速いという。また、同社のオペレーションコスト(機体運用コスト)は、従来型のヘリコプターと比べて約4倍効率が良く、25分の飛行におけるコストの見積もりは95$/フライトであるという。
(補足)なお、この「95$/25minフライト」がどのような前提で計算されたものかはわからないが、堅めにこのコストにサービス事業者の利益なども乗せるとすると、おおよそ25分フライトで100~150$と仮定してみる。実際に市民や観光客が片道100~150$以上のお金を払ってビーチに移動するかというと、やや高い印象だ。

また、同社は今回の発表で、40m$(約41億円)の受注がすでに確定しており、120m$(約130億円)分の案件の受注活動が続いているという。売上高の計画値は、2025年で700m$(約740億円)、2026年で2,100m$(約2,227億円)としている。

2024年に米国でエアタクシーを開始

同社はかねてから2024年頃までにエアタクシーを商用化することをターゲットに活動していると発表してきたが、今回改めてこのタイムラインが強調されている。グローバルにいきなりサービスを拡げる前に、ステップとしてはまずは米国からエアタクシーを開始するようだ。

エアタクシーのインフラネットワークは、既存ヘリポートや空港のインフラを活用することで迅速かつ効率的に拡張でき、ネットワーク内のルートの数は、新しいバーティポートが導入されるにつれて指数関数的に増加することを見込む。

最近も認証手続きの進展を発表

Jobyは最近にもFAA(連邦航空局)の認証手続きが前に進んでいることを発表している。2021年2月初めにFAAとの間で航空機の「G-1」認証基準に合意したことを発表した。

参考記事:トヨタが出資するエアモビリティJoby Aviationが認証に向けての進捗を発表

Uberのエアモビリティ部門も買収

また、昨年末にはUberのエアモビリティ部門であるUber ElevateもJobyが買収している。なお、この当時の発表によると「早ければ2023年からエアタクシーが運行される」ということであったが、今回2024年というタイムラインとなっている。(2023年から有償での実証サービスが開始される可能性はある)

参考記事:UberがJoby Aviationにエアモビリティ部門を売却

2023年・24年の実用化を見据えてパーソナルエアモビリティ業界の動きが加速

おおよそパーソナルエアモビリティの関連プレーヤーにおける実用化時期は2023年・24年あたりとされているが、先日のArcherによるSPAC上場に引き続き、Jobyもこのスキームで上場することになった。

また、中国ではEHangが積極的に飛行実験の実績を積み重ねており、欧州勢のLilium等も米国フロリダ州で事業開始に向けてバーティ―ポートを整備することを発表している。

実用化間近となるパーソナルエアモビリティであるが、主要各社の動きは大きく加速している状況だ。

(今回参考のプレスリリースはこちら


空飛ぶ車・パーソナルエアモビリティの世界のベンチャー動向の全体像はこちらでまとめているので、興味のある方はこちらも参考。

関連記事:(特集) 空飛ぶ車・エアモビリティの世界ベンチャー企業動向

3月30日にLiliumがSPACで上場することを発表した件についてはこちらをご参考。

関連記事:空飛ぶ車ベンチャーのLiliumがSPACで上場すると発表


ー 技術アナリストの目 -
Jobyはパーソナルエアモビリティの業界では断トツで資金調達が進んでいる企業でしたが、今回のSPAC上場により、1,600億円というさらに巨額の資金を手にすることになり、資金体力の面で一気に他社を突き放すことになります。自動運転や電気自動車の領域もそうですが、この後、エアモビリティの領域でもSPAC上場を使って他の企業も追従する動きに繋がる可能性もありそうです。パーソナルエアモビリティの領域でおおよそ30社弱程度(機体モデルでは100機以上)存在しており、様々なプレーヤーが動いています。全体像を把握されたい場合は、ぜひ上記のベンチャー動向のまとめ記事を見てみていただけるとよく理解できるかと思います。ご参考になれば幸いです。