2021年2月19日、米国FDA(U.S. Food and Drug Administration:食品医薬品局)が、特定条件下においては(例えば肌の色等)パルスオキシメーターの測定精度が低下することについて警告を発表した。他にも使用上の注意などについてもあり、現状の血中酸素濃度(SpO2)測定における技術動向を掴む上で重要な観点が色々と記載されている。

SpO2は今後デジタルヘルスの分野において新規事業を考える企業にとって、1つの注目パラメーターになると考えられ、今回の内容は参考になる。そこで本記事では、FDAの発表内容を簡単に整理している。

パルスオキシメーターとは

パルスオキシメーターとは、指先など体に光を透過させ、その血中に含まれるヘモグロビンと酸素の結合により、光の吸収量が変わる性質を利用し、動脈内の血中酸素飽和度(SpO2)を計測するデバイスのことを指す。デバイスに指を入れ、光をあてるこのタイプの測定デバイスは、原理は1972年に日本光電の青柳卓雄氏が発見し1)、デバイスとして開発したのは日本のコニカミノルタであった2)

COVID-19のパンデミックにより、新型コロナウイルスにおける初期スクリーニングや、症状の重症度を判定する指標として、SpO2が注目されている。そうした背景から、医療機関だけでなく、家庭においても消費者が購入して使われているケースが増えている。

医療機器のデバイスと健康機器のデバイス

一方で、現在様々な形でパルスオキシメーターが販売されており、FDAは2種類のデバイスがあるという。1つ目は、医師が処方して患者が利用することができる、FDAの認可を受けた医療機器としてのデバイス。2つ目は、市販の酸素濃度計であり、これらの中にはFDAの認可を受けておらず、ウェルネス・健康機器として販売されているものがある。まず、この2つ目の市販の酸素濃度計については、医療用途で使用はしないように、という注意がある。

FDAによる使用方法についての注意

いくつかの使用上の注意についても触れている。ポイントをまとめていこう。

  1. 測定方法についての注意(測定の高さ、体を動かさない、安定した数値が出るまで数秒待つ、等)
  2. 単一の測定値よりも時系列での数値変化に意味がある可能性がある
  3. 健康状態や酸素レベルを評価するためにパルスオキシメータだけに頼らない
  4. 血行不良、皮膚の色素沈着、皮膚の厚さ、皮膚の温度、現在のタバコの使用、マニキュアの使用など、複数の要因がパルスオキシメータの読み取りの精度に影響を与える可能性がある
  5. あくまで予測値であること(例えばデバイスでSpO2が90%となったら実際の動脈血内の酸素飽和度は86~94%)

特に、肌(皮膚)の色については補足をしており、こちらの論文を引用する形で、白人患者と黒人患者を比較した場合で、血液ガス測定では検出できたが、パルスオキシメトリでは検出できなかった潜在性低酸素血症の頻度がほぼ3倍の数であることについて触れている。(ただし、この論文も完全に肌の色によって精度が変わることを証明したわけではなく、FDAも今後この観点での研究が必要と言っている)

注目されるSpO2

近年はSpO2を測定できるウェアラブルデバイスも出てきており、Apple WatchやFitbitでもアプリ上でデータを見ることができる。これらの一般ウェアラブルデバイスにおいては、SpO2はあくまでFDAの認可を受けていない「健康用途」となっており、あくまで参考値でしかない点は注意だ。

SpO2についての参考記事:

(今回のFDA発表内容の詳細はこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
SpO2はまだウェアラブル領域のにおいては、医療機器グレードのウェアラブルデバイスを除くと、いわゆる一般的に購入可能なウェアラブルデバイスでは医療機器の認可を得ていないものであり、あくまで健康をモニタリングするための参考指標となっています。それでも、今後数年間でのデジタルヘルスの新規事業を検討する上では重要な生体パラメーターであり、その動向は今後も注目です。

参考文献:

1) 青柳卓雄氏とパルスオキシメータ, 日本光電HP(リンクはこちら

2) パルスオキシメーターは何が測れるの?本当に必要な方への供給が優先されることを願って, コニカミノルタHP(リンクはこちら