米国のロサンゼルスに拠点を構える新しい駐車場体験をアプリで実現するベンチャー企業のMetropolisがシリーズAで41m$を調達したことが、同社のブログで明らかになった。

駐車場体験を変えるシステム・アプリ

Metropolisは、コンピュータービジョンを用いて駐車場への車の出入りをモニタリングし、駐車場を管理するシステムを開発しているベンチャー企業だ。2017年に設立された同社はステルスモードで立ち上がり、水面下でシステムとアプリを開発。2021年2月17日にシリーズAで41m$(約43.6億円)を調達したと発表し、ついにそのステルスモードから脱却した。

今回のラウンドは3L Capitalが主導し、01 Advisors、Dragoneer、Slow VenturesなどのVCに加えて、世界的な不動産会社のStarwoodやRXR、DivcoWest、個人投資家のDan Doctoroffが参画している。

このMetropolisは創業者CEOのAlex Israel氏が立ち上げた駐車場関連スタートアップとして2社目となる。1社目は2009年にParkMeという企業を共同設立している。Alex氏は同社を世界で最も包括的な駐車場データベースに成長させ、米国、カナダ、ヨーロッパ、アジアの60,000を超える駐車場の場所を管理するアプリを提供していた。このParkMeは現在はINRIXという車両データと交通データ管理の企業が保有してサービスを提供している。Alexはこの時の経験を生かして、Metropolisを立ち上げている。

アナログな駐車場を効率管理・ユーザー体験も改善

Metropolisによると、米国において駐車場は非常に多く、都市景観全体の15%を占めているが、十分に活用されていない不動産としての最後の砦であるという(ちなみに15%のソースは恐らくこの文献1)と想定される)。同社はこのテクノロジーが浸透していないアナログな領域に目をつけて、コンピュータービジョンとアプリを活用することで、駐車場を探している人はすぐにアプリで見つけることができ、また駐車場に出入りをしても小銭を支払う必要はなく、アプリ上で自動で決済が済むという駐車場体験を実現した。

なお、この駐車場の有効活用については、日本においても注目されており、有名なアプリとして「akippa(あきっぱ)」がある。このakippaは完全にアプリ上で完結しており、駐車スペースを貸す人と、駐車したい人をアプリ上でマッチングする。

一方で、Metropolisは駐車場にカメラを備え、コンピュータービジョンによってどの車が出入りしたのかを管理する。そのため、akippaがピアツーピアのスケーラブルなビジネスモデルを指向しているのに対して、Metropolisはコンピュータービジョンというカメラが関わる分、比較的大きめの駐車場をターゲットにしていると想定される。

このMetropolisは現在、ロサンゼルスで1万台分の駐車場スペースを管理しており、今回得られた資金を活用することで、今年30を超えるエリア(ニューヨーク、サンフランシスコ、ナッシュビル、オースティン、シアトル等)に拡大するという。

(今回参考のリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
米国ではパーキングメーターもアナログなことも多く、支払いも小銭で行われるところも多いようです2)。こうした領域にテクノロジーを取り入れて一気に管理者・駐車場ユーザー双方の体験をDX化するという試みとなっています。シリーズAで41m$というのは資金調達のフェーズに対して非常に大きな金額となっており、大きなバリュエーションがついていることが想定されます。ステルスモードで、ロサンゼルスエリアという限定された地域で、しっかりと顧客がついてユーザーから評価がされているファクトが作れないと、こうした金額はいきなり調達は難しいでしょう。ロサンゼルスのモデルを他の地域に展開するという形になるので、大都市密集地域では比較的スムーズにスケールできそうに感じます。

参考文献:

1) Parking Infrastructure: A Constraint on or Opportunity for Urban Redevelopment? A Study of Los Angeles County Parking Supply and Growth

2) 日本と海外の駐車場事情を調べてみた。(akippa広報)