米国ミシガン州に拠点を置くベンチャー企業のFifth Eyeは、2021年3月2日、米国FDA(米国食品・医薬品局)が、同社が開発をしているECGデータから血行動態分析を行うソフトウェアに対して、医療機器認定を行ったと発表した。

なお、今回の医療機器認定はDe Novoで行われており、このDe Novoというのは、軽度~中程度のリスクである新型医療デバイス・ソフトウェアにおいて、すでに認定を受けている類似のものが無い場合に適用されるもの。通常、このDe Novo認定は新規性が高いものになるため、審査期間が長くなることから、可能な限り510kでの承認を目指すことが多いが、今回のソフトウェアは新規性が高いと見なされたことになる。

「GO BEYOND VITAL SIGNS」がコンセプトのFifth Eye

アルゴリズム開発ベンチャーのFifth Eye

Fifth Eyeは2017年に設立されたベンチャー企業だ。同社が開発している血行動態分析を行うソフトウェアは、患者の心電データを解析し、血行動態の状態を評価することができるアルゴリズムとなっている。

このアルゴリズムは機械学習ベースのもので、リアルタイムに、患者が煩わしい入力などをせずに、そのアウトプットを医師や看護師に提示することができる。なお、同社はこの血行動態の状態評価を、Analytic for Hemodynamic Instability (AHI:血行不安定性分析)と表現している。同社のアルゴリズムは2分ごとの周期で、血行の安定・不安定を分析する。なお、血行の不安定とは、同社によると「頻脈を伴う低血圧」と定義している。

用途は術後の容態悪化兆候モニタリング

用途の想定としては、手術後の患者が一度は容態が安定していると見なされ、集中治療室から低リスクの病棟へ移された後に、急速に容体が悪化することがあり、再度集中治療室へ移されるケースがある。こうした容体悪化の兆候を、血行動態をモニタリングすることで事前に察知し、患者の容体悪化が表面化する前に対処をすることができるようになる。

そして、こうした容体悪化の兆候は、必ずしも既存のECGやバイタルサインだけでは検知できない可能性があるという。そこで、ECGデータから「血行力学的状態」を評価し、従来見えなかった新しい可能性を発見するものとして、同社のアルゴリズムが開発された。

臨床試験では96%の感度で血行不安定を検知

今回のFDAの審査に提出された臨床試験の結果は、平均年齢58.8歳の222人の救命救急患者による9,082時間のECGデータを対象として、従来の参照数値(正解データ)と比較したもの。96%の感度で血行力学的不安定性を特定し、85%の特異性で安定した患者を特定することができたという。

(今回参考のプレスリリースはこちら


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理している。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
現在のFifth EyeのECGデータ解析アルゴリズムの用途は、あくまで術後の病院内でのモニタリング用途ですが、今回の結果はECGデータの新しい使い道を切り開くもの(ECG→血行動態)であり、今後、ECGモニタリングデバイスが市場に浸透すると、家でのモニタリングなどでも活用できる可能性がありそうです。