2021年3月1日、低速領域における自律走行システムを開発している中国ベンチャー企業のVenti Technologiesは、シンガポールの大手港湾運営企業のPSA Corporationとの間で、自律走行原動機(Prime Mover)の提供契約を締結したことを発表した。

PSAが狙う港湾オペレーションの自動化

PSAはシンガポールで世界最大のコンテナ積み替えハブを運営しており、2020年には3,660万TEUのコンテナを処理している。PSAはシンガポールに港湾施設(バース)を53か所保有しており、Venti Technologies社の自律走行原動機(Prime Mover)を活用し、シンガポールにおける港湾施設間のコンテナ貨物の輸送を自動化することを試みる。初期段階では、Pasir Panjangターミナルで自動化を行うために開発を行う。

Ventiは低速特殊車両の自動運転に特化

Venti Technologiesは2018年に設立された中国上海に拠点を置くベンチャー企業。低速領域に焦点をあてた自律走行システム・車両を開発しており、自社では数人が乗ることができる近距離移動用の自動運転シャトルを開発している。同社によると、これまで5,000kmの走行テストでソフトウェアシステムの切断はゼロであり、中国、米国、シンガポールでの9年間の開発で事故はゼロであるという。

なお、Venti Technologiesは中国における大手ロジスティクスプロバイダのSAIC Anji Logisticsとも開発契約を締結したことを発表している。倉庫内の指定されたステーションで部品を受け取り、指定された場所に配達して駐車するという一連の動作を自動化するもの。低速特殊車両における自動運転技術の地位を築こうとしている。

(今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
Ventiのテクノロジーは導入が簡単で安価であるという特徴があるようですが、技術の詳細はあまりオープンになっておらず、不明な部分が多いです。ニッチに尖った自動運転ベンチャーとして、同社のポジショ二ングは興味深く、技術やビジネスモデルについてはまた調査をしてレポートしていきたいと思います。また、今回のもう1つの注目ポイントはPSAがこの技術を採用して、オペレーションを自動化しようとしていることです。PSAは世界最大の港湾運営企業であり、PSAがこうしたベンチャーの技術を取り入れようとしているのは、Vantiのユニークさの証明と、港湾運営という領域での用途の可能性という2つの興味深い点があります。自動運転技術は乗用車や商用車に話題が集まりがちですが、こうしたニッチな低速特殊車両の市場は短期的に立ち上がる可能性もあり、今後も注目です。