3DフラッシュLiDARを開発している米国サンフランシスコに拠点を置くベンチャー企業のOusterが、同社の3DフラッシュLiDARが中国ロボバスを展開するQCraftが採用したと発表した。

3DフラッシュLiDARを活用したロボバス

2019年に設立されたばかりの無人運転ベンチャー

QCraft(北京轻舟智航智能技术有限公司)は2019年に設立されたばかりのベンチャー企業で、自動運転技術を使った無人運転ソリューションを開発している。現在、米国シリコンバレーと中国深圳・北京で拠点を構えて開発を推進している。

2020年8月に戦略的ユーザー契約を締結済み

このQCraftは2020年8月にOusterと戦略的ユーザー契約を締結しており、今回の3DフラッシュLiDARの採用は、こうした活動の成果として発表された。1台の無人バスに3台のLiDARを搭載することになるという。

都市部の低速バス市場を狙う

QCraftのターゲットは地方自治体が運営する都市部のバス市場だ。同社は2020年7月にも中国の蘇州相城区で中国初となる、定常運行を行う5Gロボバスプロジェクトを開始。これは運行速度20~50km/hの低速領域となっている。ローカルエリアを巡行するマイクロバスのステーションから、地下鉄の駅、ショッピングセンター、オフィスエリア、学校、その他の場所を結ぶハブとしての実験を行っている。なお、現時点での法律では運転手が安全管理として乗車することが必要であり、画像にも運転手が乗っているが、運転は自動運転で行われている。

次いで、QCraftは深圳でも実証を開始しており、今年末までに中国の公道に少なくとも100台の自律型バスを設置する予定で、今後数年間で大幅な成長が見込むという。

「OusterのLIDARへのデジタルアプローチは、公道に安全に展開するために必要な高性能と、センサーコストを削減するための明確な道筋を提供します。これは、大規模な商用展開を達成するという私たちの目標と一致しています」とQCraftの共同創設者兼CEOのYUQian氏は述べている。

広角・短距離・低コストが特徴な3DフラッシュLiDAR

OusterのLiDARはレーザーを発射するための垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)チップと、反射したレーザーを検出するためのフォトンアバランシェダイオード(SPAD)チップを組み合わせ、1,550nmの光源を使ったマルチビームフラッシュライダーとなっている。

これは、機械走査型のように360°のFOVではないが、面で光を照射するためにMEMS式より広角性を持たせやすく、走査機構が無いため低コストでの量産が可能となっている。現時点では競合のLeddar Techのように短距離での利用で実用化されており、Ousterは今後の研究開発により車載用として反射率10%で最大200mの検出距離を実現する計画だ。今回のように低速~中速のシャトルなどは同社の特徴がマッチする1つの用途となる。

今回の発表において、Ousterのアジアパシフィック地域GMのClement Kong氏はこう述べる。「QCraftはシャトルバスの自律型公共交通市場のパイオニアであり、公道での車両の安全な配備における彼らの成長と進歩を見ることに私たちは皆興奮しています。当社のデジタルLIDARセンサーの高性能と信頼性に支えられて、QCraftはそれらの前に大きなチャンスをもたらします」

(今回参考のプレスリリースはこちら


MEMS LiDARやFMCW LiDAR、フェーズドアレイなど、方式別の技術動向や特徴について知りたい方はこちらも参考。

参考記事:(特集) 車載LiDARの技術動向 ~種類・方式の特徴と全体像~


ー 技術アナリストの目 -
Ousterは投資家向け説明資料でも、産業向けやスマートインフラストラクチャ、ロボティクス用途など、乗用車に留まらず幅広く製品を展開する意向を示しており、今回の無人バス・シャトルへの展開というのは短期的にマネタイズをする上で重要な実績の1つだと見られます。一方でロボバスのQCraftに目を向けますと、2019年に立ち上がったばかりですが、すでに運航実証の実績を積み重ねており、こちらも興味深いプレーヤーです。どのように市場を開拓していくか、引き続き両社に注目していきたいと思います。

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