Uberは最近、コロナウイルスによるパンデミックの経営への影響もあり、急速に事業再編を進めている。ロボタクシー部門はAuroraに売却し、エアタクシー部門はJoby Aviationに売却した。大きな方針としては、本業である配車サービス・フードデリバリー・貨物サービスという3本柱への集中であり、それに付随する自動運転技術は売却し、内製化ではなく他社との協業により技術を調達する方針に切り替えている。

そして、それは今回の自律走行配送ロボットの領域でも同様だ。

自律配送ロボットのServe Robotics

シードラウンドを完了

2021年3月2日、Uberは自律配送ロボットのServe Roboticsをスピンアウトし、VCのNEOが主導でServe Roboticsのシードの資金調達を完了したことを発表した。なお、今回のシードラウンドにはUberや他の投資家も参加している。

歩道専用の自律配送フードデリバリーロボ

Serve Roboticsは4本の車輪をつけた、歩道を走行する自律配送ロボットを開発している。このロボットは食品や日用品などを入れることができるサイズの荷台が格納されており、上部の蓋を開けることで、品物を入れて運ぶことができる非常にシンプルな構造をしている。同社はそのハードの詳細について明かしていないが、映像や画像から、頭頂部にLiDARを搭載し、目にあたる部分には2つのカメラを備えていることが伺える。

(補足)ちなみにLiDARはOusterの3DフラッシュLiDARを使っているようだ。OusterのサイトにServe Roboticsのロボットの画像がある。(ページはこちら

同社のロボットはすでにロサンゼルスで何千回もの配送を行っており、すでに稼働している。同社によると、米国内のすべてのレストラン配達のほぼ半分は徒歩40分以内であり、こうした配送をロボット配送にすることで、より速く、より安全に、より低コストで配送を実現することができるという。

TED公開の動画への直リンク

米国の食品配信アプリの売上高は世界的な大流行に支えられ、2020年に265億ドル(約2.8兆円)となっており、この市場規模は今後5年で420億ドル(約4.5兆円)となると予想されている。

ServeRoboticsの共同創設者兼CEOであるDr.Ali Kashaniは、次のように述べている。「今後20年間で、新しいモビリティロボットは私たちの生活のあらゆる側面に参入します。最初に食べ物を動かし、次に他のすべてのものを動かします。」

元々はUberが買収したPostmatesで開発されていた

Servie Roboticsは、Uberが2020年7月に買収したオンデマンドのフードデリバリー大手のPostmatesの一部門からスピンアウトしたものとなっている。なお、共同創業者のDr.Ali Kashani氏は、このPostmatesにおけるスペシャルプロジェクトVPであり、Serve Roboticsの実用化に取り組んでいた。Dr.Ali Kashani氏のLinkedInを見ると、このプロジェクトは2017年から始まっているようだ。

(補足)Postmatesはオンデマンドのフードデリバリーの大手で、米国50州でサービスを展開しており、2020年7月にUberが約2,800億円で買収をしていた(当時の発表はこちら)。

(今回参考のプレスリリースはこちら


先行する他の自律走行フードデリバリーの記事はこちら。

参考記事:自動運転配達ロボのStarshipが17m$を調達し、100万回の自律走行配達を達成したと発表

参考記事:ローカル自律配送車両のNuroが500m$の資金調達を実施


ー 技術アナリストの目 -
フードデリバリー市場はコロナウイルスのパンデミックによる追い風も受けて、世界中で大きく拡大しています。特に市場規模が大きいのが中国で米国であり、こうした市場にロボティクス・自動運転の技術が入ることで、さらに新しい市場を形成することになるでしょう。この自律走行フードデリバリーの領域も、今回のServe Roboticsや以前紹介したStartshipが取り組んでいる歩道走行タイプと、Nuroのような車両タイプとあり、どちらもすでに有償サービスの実証が進んでいます。すでに「エリアを限定した状態では実用化できている」とも言うことができ、2021年はさらに飛躍することが期待されます。