Baiduの自動運転プロジェクトApolloの活動が活発化している。昨月には中国北京の自動運転走行レポートで、中国北京における自動運転走行距離で断トツの走行距離を達成したことも発表されている。そのBaiduは、中国成都で17億円規模(1億500万人民元 =16.1m$)の5Gインテリジェント運転プロジェクトで採択されたことを、3月10日に発表した。

成都で始まる5Gインテリジェント運転プロジェクト

成都は四川省の省都であり、中国西部地域において最も経済発展が進んでいる都市となっている。この成都は1991年からハイテク産業開発区という認定を国から受けて、工業化の様々な推進を行ってきた。

この成都ハイテク産業開発区では近年、AI業界を積極的に支援しており、今年2月にもAIイノベーションの全国パイロットゾーンを開設している。このハイテクゾーンでは、スマート交通、産業用インターネット、高度道路交通システムなどの主要分野に焦点があたっており、5GやAI産業の成長を促進するという狙いがある。

今回の5Gインテリジェント運転プロジェクトは、Vehicle-to-Everything(V2X)インフラの構築や、それらのソフトウェア・ハードウェアの開発、インテリジェント車両への実装を行い、その実証を行うものとなっている。30kmの長さの既存の道路を再編成し、V2X技術を活用して、道路、乗客、車の間のデータ共有を促進。自動運転システムと連携して、ロボットバスなどの運行も行うという。

(補足)なお30kmというと、日本ではおおよそ東京都心から柏や、海浜幕張、大宮などの東京近郊のハブ都市に接続できる程度の距離となる。

スマートシティ交通インフラを狙うBaidu

Baiduの自動運転プロジェクトApolloは、オープンなプラットフォームとして、自社の自動運転システムを戦略的パートナー企業に開放している。そうした中でBaiduは、V2Xと自動運転を組み合わせ、ロボバス(自律シャトル)のようなサービスの実証を自ら行い、社会実装を主導している。

同社が狙うのは、スマートシティ交通インフラや自動運転で核となるシステムの部分だ。自動運転やV2Xのシステムを土台として、様々なハードウェアやアプリケーションでパートナー企業を集め、必要であれば自社自らがサービスやアプリケーションの社会実装を牽引するスタンスである。

今回のプロジェクトでは、Apolloが展開している「ACE Transportation Engine」という高度道路交通ソリューションが使われる。このシステムはスマート交通におけるシステムを統合したものとなっており、従来ETC、信号機制御、V2X、踏切制御など全て縦割りで運用されていたシステムとネットワークを1つに統合し、全体最適を行う。なお、このシステムは現在約20の都市で運用されているという。

(今回参考のプレスリリースはこちら


Baidu(百度)の自動運転プロジェクトについての全体像はこちらでも整理しているのでご参考。

参考:(特集) 自動運転オープン化によるエコシステム構築を狙うBaidu(百度)~俯瞰的に解説~


ー 技術アナリストの目 -
Baidu(百度)は自動運転やV2Xのコアとなるシステム部分を土台として、アプリケーションレイヤーまで、非常に幅広く手掛けることで、自ら都市交通におけるインテリジェント化の社会実装を牽引しようとしています。今後の自動運転社会では、自動運転やV2X技術の都市交通へのインテグレートが焦点になることもあり、そうなると都市交通インフラのレイヤーでプロジェクトを進める必要が出てきます。日本で言うと三菱重工や日立製作所などの企業が手掛けてきた領域だと思いますが、Baiduの場合はコアのシステムを自社でしっかりと手掛けながら、パートナーシップも上手く活用してハード、アプリケーション(例えばロボタクシーやロボバスなど)まで一気に手掛けてしまうことができ、その動きは非常に早いと感じます。