中国スマートフォン大手のXiaomi(小米科技)は、創業からわずか10年で売上高は3兆円、そしてグローバルのスマートフォンのシェアでもTOP5入りをしている。すでに同社の勢いは中国に留まらず、海外売上高の比率は約50%に高まっている。

そのXiaomiが電気自動車(完成車市場)への参入を検討していると中国メディアのLatePostが報じている。今回はXiaomiによる電気自動車参入可能性について取り上げる。

スマホメーカーからグローバルIoT企業となりつつあるXiaomi

Xiaomiは2010年に設立されたスマートフォンメーカーだ。主に若年層に支持を受けて急成長した同社は、創業からわずか10年で売上高3兆円の企業となっている。もちろん、Xiaomiの主力事業はスマートフォンだ。

調査会社のカナリスが発表した、最新の2020年世界スマートフォンシェアでは第四位に位置しており、元々は中国を中心としていた同社の事業は、もはやグローバルに広がっている。

世界のスマートフォンシェア(2020)1)

メーカー出荷台数(百万台)シェア
Samsung255.620%
Apple207.116%
Huawei188.515%
Xiaomi149.612%
Oppo115.19%
その他348.928%
Canalysプレスリリースより筆者作成

そして、同社の事業はスマートフォンから領域をIoTコンシューマー製品へと拡大している。現時点ではスマートフォンは同社の約60%を占める中核事業であるが、IoT・ライフスタイルプロダクトの売上比率はすでに同社全体の30%まで成長している。このセグメントはスマートTVや、ウェアラブルデバイス、電動スクーターなど様々な製品が含まれている。

Xiaomiの事業別売上高割合(2019)

同社IR資料より筆者作成

同社はスタートアップに数多くの投資をしており、いわゆるオープンイノベーションに積極的だ。CEOのLei Jun氏はブログでこう語る。「私たちのユニークなエコシステムモデルにおいて、私たちは多くの志を同じくする起業家を支援し、体制構築してきました。私たちは一人ではありません。一緒に、モバイル周辺機器、スマートハードウェア、ライフスタイル製品など、スマートフォンを中心とした包括的な製品スイートを作成しました。現在、Xiaomiは90を超えるIoTおよびライフスタイル企業に投資しており、一緒になって多くの業界を変えてきました。将来的には、私たちのエコシステムはさらに大きくなるでしょう。

電気自動車への参入を検討

創業者のLei Jun氏がプロジェクトを主導

複数の中国メディアによると、Xiaomiは急拡大をしている電気自動車への参入を検討しているという。Xiaomi自体が参入するのか、創業者でCEOのLei Jun氏が別の企業を立ち上げて参入するのか双方の選択肢があるが、現時点ではLei Jun氏がプロジェクトを主導しているようだ。ただし、現時点ではあくまで検討プロジェクトの初期段階であり、方針は変更される可能性がある、と中国メディアは報じている。

(補足)
Xiaomiの電気自動車(完成車)への参入検討意図はまだ不明確であるが、筆者は以下の理由からXiaomiが参入を有望視していると考えている。
(1) 中国の自動車市場は全体ではコロナの影響で減少も、電気自動車(EV, PHV, FCV)は増加しており、急速に有望市場として立ち上がっている
(2) 特にコネクテッドカーになると、IoTの領域と連動してくるため、同社のスマホや他のIoT製品との融合領域が生まれる
(3) 既成市場にそこそこ品質低価格で一気にシェアを奪うのがXiaomiの成功モデルであり、Xiaomiモデルが通用する可能性があると見ている
(4) Xiaomiがライバル視しているAppleもApple Carで参入する報道がある

Xiaomiはモビリティ関連分野へ出資している

Xiaomiはこれまでもモビリティ分野に投資をしており、同分野への関心があることを匂わせている。

同社はこれまでリードインベスターとして50件のベンチャー投資を行っている2)。その中でも2019年11月に実施した電気自動車ベンチャーのXpeng(小鵬)のシリーズCラウンドで400m$(約439億円)もの巨額調達のリードインベスターの1社となり、XpengとXiaomiの関係は深い。他にも、過去にGPSを用いたマップコンテンツ企業のCareland、個人用近距離移動のNinebot(セグウェイを買収した企業)、電動バイクのSuper SOCOらのリードインベスターとなっている。

また、CEOのLei Jun氏が運営しているベンチャーキャピタルのShunwei Capitalも、XpengとNIOに出資をしている

Xiaomiが仕掛ける家電と自動車の融合領域の可能性

Xiaomiは電気自動運転車のベンチャー企業NIOとの関係の中で、スマートウォッチのXiaomi Mi Watchを使い、NIOのアプリをXiomi Mi Watchと連動させることで、時計で自動車のリモートコントロールを行う取り組みを行っている。

スマートウォッチを介して、車両のバッテリ状態をモニタリングしたり、ドアや窓のロックの開け閉め、エアコンのOn Offなどができるという。

(補足)
現時点ではまだ自動車分野との連携は一部に留まるが、Xiaomiが狙っている領域は、こうしたコネクテッド車両における家電と自動車の融合領域である可能性もある。

中国ITベンチャーによる参入が相次ぐ自動運転・電気自動車

中国ITベンチャーであるBaidu、テンセント、アリババという中国のIT御三家はこぞって自動運転に参入している。その中でもBaiduはGeely(吉利)と協業でスマート電気自動車の製造に参入することを今年表明しており、完成車への参入を明確にしている。

これらの企業が狙うのは、完成車のみならず、そのコアとしてのシステムや、新しいコネクテッドや自動運転時代において新しく生まれるサービスレイヤーまで、その領域は非常に広い。Xiaomiが今後どのようなポジショニングで参入を具体化させるのか、引き続き注目だ。


同じく中国IT企業のBaidu(百度)の自動運転の取り組みを整理したこちらの記事も参考。

参考:(特集) 自動運転オープン化によるエコシステム構築を狙うBaidu(百度)~俯瞰的に解説~


ニッケルリッチ正極やシリコン負極、リチウム金属などの先進リチウムイオン電池に関する技術動向の全体像についてはこちらの記事も参考。

参考:(特集)車載向け次世代電池の技術開発動向① ~先進リチウムイオン電池~


ー 技術アナリストの目 -
今回はXiaomiの報道をベースにして、最近のXiaomiの動きも含めて取り上げました。中国企業の凄まじいところは、市場が顕在化して成長フェーズに入る瞬間をとらえて、巨額投資を行い、最新のテクノロジーを組み合わせて一気に参入してくるところです。もはや自動運転市場や電気自動車市場は中国抜きでは語ることができなくなってしまいました。XiaomiはAppleを激しくベンチマークしていると考えられ、Apple Carの動きとともにXiaomiの動きも目が離せなくなってきています。

参考文献:

1) Worldwide smartphone shipments Q4 2020 and full year 2020(リンクはこちら

2) Crunchbaseより筆者集計