高精細4Dレーダーを開発しているイスラエルベンチャーのArbeが、SPACで上場すると3月18日に発表した。自動運転の核となるセンサーにおいて、LiDARでは様々なベンチャー企業がSPACのスキームを活用しているが、レーダーにおいてもその動きが出てきたことになる。

2021年第二か第三四半期に完了予定

Arbeは特定目的会社のIndustrial Tech Acquisitions, Incと合併し、米国新興市場のナスダックに上場する。合併後の企業名もArbe Robotics Ltdとなる。この取引は、株主の承認・その他の慣習的な完了条件を条件として、2021年の第2四半期後半、または第3四半期初めに完了する予定となる。

今回の取引において、Arbeの企業価値はpost-moneyで572m$(約623億円)と想定され、この取引を通して最大177m$(約192億円)の資金を得ることになるという。

高精細4DレーダーのArbeとは?

三大重要センサは「カメラ」「LiDAR」「レーダー」と言われており、ミリ波領域の周波数帯のレーダーはすでにADASの前方監視用などで自動車に搭載されている。LiDARに比べると外部環境に対してロバストであり、雨や霧の条件下でも長距離で物体の検知が可能となる一方、分解能が低いという特徴がある。

そうした中で、Arbeが開発をしているのは高精細な4Dレーダー技術だ。

Arbeは2015年に半導体エンジニア、レーダースペシャリスト、データサイエンティストのチームによって設立されたベンチャー企業である。独自開発した自動車グレード向けのRFチップセット、特許出願中のベースバンド処理チップ、レーダーの相互干渉を防ぐFMCW方式(周波数連続変調)、これらの技術を組み合わせて4D超高解像度を実現した。

同社公開の動画への直リンク

発表によると、同社の高解像度4Dイメージングレーダーは、現在市場に出回っている他の競合レーダーよりも12倍優れた解像度を持つ。方位角と仰角の両方で2Kの解像度でオブジェクトを分離、追跡、識別し、オートパイロットにおける警告や、緊急ブレーキ・ステアリングを適切なタイミングで実施することを可能にする。

  • 検出距離  :最大300m
  • FOV    :100°×30°
  • 角度分解能 :1°×2°(方位角×仰角)
  • 解像度   :7.5cm~60cm
  • ドップラー解像度:0.1m/s

同社はすでに多くの主要なTier1メーカーとOEMは現在、Arbeの画期的なテクノロジーに基づいて次世代レーダーを設計している。ロボット、自律地上車両(AGV)/配送ポッド、商用車、産業用車両など、さまざまな追加アプリケーションの高度なセンシングも可能になる。

(今回参考のプレスリリースはこちら


レーダーの海外スタートアップについては、こちらでもまとめているので全体像を知りたい方は参考。

参考:自動運転のカギとなるレーダー(Radar)センシングベンチャーTOP5


ー 技術アナリストの目 -
ついにレーダーの領域でもSPACの事例が出てきました。LiDARではすでにSPACを活用した上場による巨額資金調達が相次いでいますが、LiDARに比べてレーダーは現状の市場規模は大きいですが、ある程度成熟しており、資金調達の動きは全体的にやや堅い状況でした。またそうした市場の成長性は時価総額にも表れており、LiDARでSPAC上場したLuminarは時価総額約3,000億円、Ousterは約2,000億円である一方で、今回のArbeは623億円となっています。