シリコンフォトニクス技術による独自のセンシングプラットフォームを開発している、英国ベンチャー企業のRockley PhotonicsがSPACで上場することを発表した。統合後はニューヨーク証券取引所に上場することになる。

今回のSPACは特定目的買収会社のSC Health Corpと合併することに合意したもの。合併後はRKLYのシンボルで上場企業となり、企業価値は12億ドル(約1,300億円)で評価されている。

シリコンフォトニクスとは?

シリコンフォトニクスは半導体製造技術を使い、チップ上に発光や受光、光変調などの機能を持つ光デバイスを形成する技術である。近年、急速に実用化が進んでおり、様々なアプリケーションで利用されようとしている。先日、自動運転ベンチャーのAURORAがLiDARの量産化をにらんでシリコンフォトニクス技術を使ったFMCW LiDARを買収したことも紹介したが、自動運転のようなアプリケーションでも期待されている。

参考:自動運転のAuroraがLiDARオンチップのOURS Technologyを買収

このシリコンフォトニクスが期待される理由であるが、主には2つある。1つ目は半導体の微細加工技術を使って1チップに様々な光デバイスを統合できるため、小サイズ化が可能であること、2つ目は半導体製造プロセスを活用できるため、量産時に大幅なコスト低減が可能になることである。

Rockley Photonicsとは?

シリコンフォトニクスの権威 Andrew Rickman氏が設立

今回SPACを活用して上場するRockley Photonicsは、シリコンフォトニクスの研究におけるパイオニアであるAndrew Rickman博士によって2013年に設立された。Andrew氏は現在、同社のCEOを務めている。本社は英国オックスフォードにあり、米国、フィンランド、ウェールズ、アイルランドにも拠点がある。

約424億円以上を調達済み、今回の取引で最大351億円を調達

Rockley Photonicsはこれまでもすでに複数回の資金調達ラウンドを実施しており、これまでの総額で390m$(約424億円)の資金を調達している。投資家はほとんどVCなどの金融機関であるが、AMAT(Applied Material)のCVCも出資をしている。

今回の一連の取引を通じて、SC Healthの信託口座に保有されている最大1億7,300万ドルの現金の拠出を含め、最大3億2,300万ドル(351億円)の総収入が合併後の会社に入る見込み。なお、このタイミングで医療機器大手のメドトロニックも出資者として参画する。

SPACの取引は2021年の第2四半期に完了する見込みだ。

シリコンフォトニクスのファブレス企業

同社のポジショニングはあくまでファブレスであり、独自に開発したマルチミクロン導波路プラットフォームをコア技術としている。より高密度の導波路回路、より優れた製造公差、優れた光パワー処理、およびフォトニクスICへのより効率的なインターフェースを実現する。

「手首のクリニック」健康モニタリングプロジェクト

今回のSPACによる取引により、Rockley独自のセンシングプラットフォームの商業化を加速する。中でも同社の発表で1つ触れられていたのが、「clinic-on-the-wrist(手首のクリニック)」である。

これは、同社のシリコンフォトニクス技術による光学センシングで、乳酸、ブドウ糖、水分補給、血圧、中核体温などのマルチモーダルバイオマーカーの継続的かつ非侵襲的なモニタリングを可能にすることで、消費者の健康・ウェルネスに革命を起こすものだとしている。

このセンシング技術はスマートウォッチやフィットネスバンドに組み込むことができ、現在、ウェアラブルデバイスで一般的に使用されているLEDセンサーよりもはるかに正確であるという。また、すでに世界最大のコンシューマーエレクトロニクス企業やウェアラブル企業など複数の企業と協業していることも明らかにした。医療機関やMedTec企業とも協業し、一般消費者が病気を早期に発見し、栄養をより適切に管理し、予防医療に集中できるようにするという。


2021年に注目すべき、デジタルヘルスの健康・ヘルスケアモニタリングや解析技術の動向について整理した。技術の全体像について知りたい人はこちら。

参考:(特集)2021年デジタルヘルスの技術動向 ~健康・ヘルスケアモニタリング / 解析~


ー 技術アナリストの目 -
今年のCES2021×デジタルヘルスの記事でもまとめで触れましたが、光デバイスを活用したPPGの技術による生体センシングが盛んになりそうです。背景にはアルゴリズムとハードウェアの進化があり、このRockleyのシリコンフォトニクス技術は、まさに様々なウェアラブルデバイスのPPGで活用される可能性があるものとなっています。同社は技術プラットフォーム戦略を取っているため、あまり個々のアプリケーションに関する発表を行っておりませんが、協業パートナー経由で今後様々な発表がある可能性があります。シリコンフォトニクスで乳酸、ブドウ糖、水分補給、血圧、中核体温のような生体センシングが可能になるのだとすると大変興味深く、今後の情報に注目です。