自動運転トラックを開発している米国ベンチャー企業のTuSimpleが、3月23日、米国新興市場のナスダックにIPO申請をしたことを発表した。自動運転業界ではSPACを活用したIPOが相次いでいるが、TuSimpleはSPACではなく、通常のIPOプロセスでの申請となるようだ。

自動運転トラックのTuSimpleとは

自動運転レベル4技術の開発を行う

TuSimpleはカリフォルニア州サンディエゴに本社を置き、上海、北京にも施設を持つ自動運転テクノロジー企業である。同社は、長距離大型トラックの需要狙った、商用対応のレベル4(SAE)自動運転ソリューションを開発している。

すでに同社が自動運転の走行テストを行った距離は、シミュレーションベースでは1億5,000万マイル(2.4億km)、実環境では2.8百万マイル(4.5百万km)となっている。レーダー・LiDAR・HDカメラ・超音波センサを搭載し、360度を認識することができ、暗い環境下でも1,000mの検出範囲を実現、5cm以内精度の高解像度(HD)マップ、冗長なセンサーシステム構成の設計となっており、30秒で経路計画が可能であるという。

なお、独自で作成している高解像度HDマップは同社の1つの特徴となっており、現在、1週間に250マイル(402km)以上のペースで道路をマッピングしており、HDマップの生成を行っているという。このHDマップの範囲は、2024年までに米国本土全体のルートマップカバレッジを達成する予定であることも明らかにした。

大手トラックOEM NavistarとTRATONとの提携

TuSimpleは以前から関係の深かったグローバル大手商用車OEMのNavistarと2020年7月に提携を発表した。この提携の目的は、2024年から北米市場向けの専用L4自律型セミトラックのラインを大規模に生産することであり、予約を受付けてから最初の4か月間で、約10社の顧客から5,700件を超える予約を受付けたという。(なお、この予約の75%はTuSimpleへ出資を行っている商用フリートの運営企業であるようだ)

このレベル4自律型トラックは2024年から、顧客の需要に応じて数年かけて納車されていくという。

また、2020年9月には相次いでフォルクスワーゲン子会社のTRATONとの提携も発表。TRATONのScaniaトラックを使用して、スウェーデンのSödertälje and Jönköping(セーデルテリエとヨンショーピング)間において、最初のL4自律ハブツーハブトラック貨物輸送ルートに向けた開発を行っている。

数多くの事業会社からの出資

同社が今回発表した内容によると、2015年に設立されて以来、同社が調達してきた資金の総額は8億ドルを超えるという。昨年11月にはシリーズEで350m$もの資金も調達している。

参考:元GM副会長が率いるVCが主導し、自動運転トラックのTuSimpleがシリーズEで350m$の資金を調達

出資者には、提携を発表しているトラックOEMのNavistarやTraton、そしてTratonの親会社であるフォルクスワーゲン、中規模トラック運送企業のU.S. Xpress Enterprises、韓国のTier1サプライヤであるMando Corporation、中国のオンラインメディア企業SINA Corporation、NVIDIAのCVC、グローバル物流のUPSのCVCなどが確認できる1)


ー 技術アナリストの目 -
TuSimpleがSPACではない通常スキームでのIPOを申請したことを発表しました。自動運転業界ではIPOするしないに関わらず巨額資金調達が相次いでいますが、自動運転トラックも後に続く形になります。他にもTuSimpleの競合にあたるベンチャー企業のPlus.aiやEinrideも上場を模索しているという情報があります。競争に勝ち残るために、自動運転トラックの開発企業においては、こうした上場(または上場しないまでも巨額資金調達)の動きが続くことでしょう。

参考文献:

1) Crunchbaseより