米国の自律配送車両のNuroに、トヨタのWovenキャピタルが第一号案件として出資を行い、また米国の大手レストラン企業であるChipotle Mexican Grill(チポトレ・メキシカン・グリル)も、自律配送車両を開発している米国ベンチャーのNuroに出資を行ったことが、3月25日に発表された。

ラストワンマイルの自律配送技術開発で一歩先を行くNURO

Nuroは食品や日用品のラストワンマイルにおける自律配送を実現するための車両「R2」を開発している。すでにカリフォルニア州では公道での自律走行の許可を得て、ドライバー無しでの公道走行が許可されている6社の1社となっている。走行実験を重ねており、カリフォルニア州DMVが公開した離脱レポートによると、2020年は5万5000マイルの走行距離を達成している。

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実際に完全自動運転で公道を走っている様子がうかがえる

昨年にも同社はシリーズCで500m$もの巨額の資金調達に成功しており、このラストワンマイルの分野では、走行距離でも、資金調達額でも先を行っているトップランナーの1社だ。

そのNUROにおけるシリーズCの資金調達の一環として、今回の出資が位置付けられている。

参考:ローカル自律配送車両のNuroが500m$の資金調達を実施

Wovenキャピタル第一号の出資

今回出資を行った1社のWovenキャピタルは、Woven Planet Groupのグループ会社の1社である。Woven Planet Groupは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント株式会社の事業を更に拡大、発展させるために2021年1月に設立されたグループで、関連会社4社があり、コーポレートベンチャーキャピタルとしてWovenキャピタルが設立された。

今回のNUROへの出資はWovenキャピタルの第一号出資となっており、ポストコロナにおいて、安全でユーザーフレンドリーな自律走行車両による配送の取り組みを評価して出資を行っている。

レストラン×自動運転の動き

また、今回Chipotle Mexican Grill(チポトレ・メキシカン・グリル)も出資を行ったことを同日発表している。チポトレは米国やカナダ、イギリス、フランス、ドイツ等でレストランを運営する企業で、従業員数は88,000人とかなりの規模の大手企業だ。

この大手レストラン運営企業は、現在急速にDXを進めており、昨年コロナウイルスによる影響があった中で、デジタルビジネスが2020年に前年比174%もの成長をした。その半分は、フードデリバリーによるものだという。

そうした中で、チポトレは自ら自動運転技術に出資を行ったことになる。

最高技術責任者のCurt Garnerは、次のように述べている。「Nuroは従来の配達モデルを変える可能性があり、消費者は食事を楽しむ方法と場所についてのオプションと追加のアクセスポイントを探し続けると信じています。」

小売店やスーパーでもサービス開始が始まる

NUROは以前からドミノピザや全米最大のスーパーであるKroger、ウォルマート等と提携を行っており、例えばヒューストンではKrogerの店舗から自宅までの自律配送をすでにサービス化して開始している。なお、配達は5.95ドルの定額料金となっており、最小の注文数は無く、当日、または翌日の配達をスケジューリングできるという。

(今回参考のプレスリリースはこちら、参考1参考2


自動運転ベンチャーの最新動向がわかるカリフォルニア州の走行距離レポートをまとめているためこちらもご参考。

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ー 技術アナリストの目 -
Nuroは走行距離に現れているように名実ともにラストワンマイル×自律走行の領域で先行しているベンチャー企業であり、今回のWovenキャピタルの出資はその裏付けの1つでもあるかと思います。Wovenも興味深くはありますが、より面白いなと思ったのはチポトレ・メキシカン・グリルというレストラン系の事業会社からの出資の動きです。ラストワンマイルの領域ではすでにNuroがカリフォルニア州から許可を得て、商業サービス展開が可能になっていますが、短期的にマネタイズが期待される市場でもあり、ユーザー側でどう活用されるかが非常に重要です。今回のチポトレの出資はユーザーサイドの動きであり、こうした自律車両がデリバリーで使われることで社会実装が進むことが期待されます。