倉庫や製造現場に特化した自律型搬送ロボットを開発している中国ベンチャー企業のForwardX Roboticsは、3月26日にシリーズBで38m$(約41.6億円)の資金を調達したことを明らかにした。

ForwardX Roboticsは今回調達した資金を使い、新製品と既存製品の開発を加速するとともに、中国と米国市場でシェアを拡大する。また日本やドイツ、英国などの新しい市場も開拓するという。

ForwardX Roboticsとは

同社は2016年に中国北京で設立されたベンチャー企業だ。ロボティクス×AIの技術で倉庫や製造現場で使う自律型搬送ロボットを開発している。200を超える特許を申請中で、300人近くの従業員がおり、40%はエンジニアであるという。

今回シリーズBの資金調達を実施したが、同社が発表したところによると、すでに資金調達総額は74m$(約81億円)を超える。

同社のロボットは、コンピュータービジョンとLiDAR、そしてオドメトリ(※1)を使用して、ディープラーニングによる高レベルの処理を行う。そしてカメラで撮影した映像から自己位置推定と環境地図作成を同時に行うVSLAMポジショニングや、そして強化学習ベースでのナビゲーションと回避行動により、倉庫や工場等で自律走行を行う。

※1 オドメトリとは自己位置推定技術の1つで、自律移動型ロボットで用いられる手法。ロボットのタイヤ回転量からロボットの軌跡を推定することができ、手軽に実装が可能だが、単独で用いると誤差が累積してしまうため、他の手法と組み合わせて使う必要がある。

同社はその技術の完成度から、SF DHL、ITOCHU Logistics、TCLなど、幅広い業界の多くのFortune500企業にサービスを提供しており、すでに実用化フェーズにいるロボット企業の1社となっている。

物流大手のSF DHLが採用、ピッキングの生産性は2倍に向上

同社公開の動画への直リンク

同社のロボットは、重要顧客の1社である中国の物流サービスを手掛けているSF DHLの北京倉庫で採用されている。このSF DHLの北京倉庫は、11,000m2を超える床面積を持ち、中国最大のコーヒー小売業者の1つに流通サービスを提供している。

従来、ピッキングとソートを手動で行っていたが、配送センターではピッキングの生産性が低いという課題があった。振り分けのミスが頻繁に発生し、人件費が上昇してしまうという問題があったという。そこで、DX化を図るSF DHLの長期戦略の一環で、ForwardX Roboticsのソリューションを採用。ピッキングの生産性は2倍に、人件費は43%削減されたという。

大手企業のTCLも工場内の材料搬送で採用

また、高精細TVやスマートフォンなどの中国大手メーカーであるTCLも同社のロボットソリューションを導入している。恵州工場の生産施設全体での材料の搬送自動化を実現。2020年3月から稼働している。

このプロジェクトは5G+スマートファクトリーイニシアチブの取り組みの一環となっており、工場内で配備された5Gネットワークを活用し、接続、通信がされ、生産計画の立案から資材選択・準備、材料の自動搬送、完成品の集荷と搬送までが自動化されている。


ー 技術アナリストの目 -
自律搬送ロボット、いわゆるAGV(Automatic Guided Vehicle)の有望ベンチャーです。日本ではやや導入の動きが堅いですが、世界ではおおよそどの調査会社でもCAGRが10~10数%前後で成長する有望市場と見られています。すでにTCLやDHLでも採用が始まっている中国ロボットベンチャーがいるというのは大変興味深く、ロボティクスの領域も中国発の話題が増えており、こうした領域でも中国の存在感が強くなっています。