開発が進む睡眠モニタリングデバイス

睡眠モニタリング技術は現在様々な方法で実現されている。

元々は、脳波計を使って睡眠をモニタリングするデバイスが広く研究や医療領域で活用されていた。一般に使う睡眠センサーは、アクチグラフという、スマートウォッチについている加速度センサーを使って簡易に測定する技術からスタートしている。現在は加速度計に加えて心拍数も組み合わせることで、Fitbitなどのウェアラブルデバイスは睡眠ステージを判定している。

しかし、こうしたウェアラブルデバイスでの睡眠モニタリングは、必ず就寝中にデバイスを身に着けていなければならない、という装着負担の課題がある(気にならない人も多いが、時計を身に着けて寝ることが気になる人もいる)。

そこで、非接触で睡眠モニタリングを行う技術が開発されており、ベッドの下に据え置くタイプのセンサや、カメラや電磁波で体動から心拍数を読み取り睡眠判定を行うものが開発され、一部は実用化されている。なお、こうした技術は世界最大規模のコンシューマーエレクトロニクス展示会CESでも毎年数多く展示されており、以下の記事でも取り上げている。

参考:【CES2021】デジタルヘルス・ウェアラブルの最新技術や海外スタートアップ

Next Hubを使ったレーダーベースの睡眠モニタリング

FMCWミリ波レーダーを利用

今回、Googleが発表したのはNest Hubを使った、咳やいびきの検出アルゴリズムもついたレーダーベースの睡眠モニタリングだ。このレーダーセンサー(Soilという)が搭載されたのは、Nest Hubの第二世代となっている。

同社公開の動画への直リンク

このSoilは指のタップから人の体の動きまで、さまざまなスケールでのジェスチャー検知に使用できる。この小型センサーSoilは、FMCW(周波数変調連続波)のミリ波波長帯のレーダーセンサーとなっており、超低電力の電波を照射して、対象物の反射波を受信することで対象物までの距離と対象物の速度を検知することができる。いわゆる通常のレーダーセンサーだ。

(補足)FMCW(周波数変調連続波)とは、従来からミリ波センサーで使われてきたもので、時間の経過に応じて周波数が直線的に上昇するように変調を行った電波を連続的に照射し、送信波と反射波の周波数差から距離を求める。特徴として、ToFに比べて感度を高くすることができ、他の反射波の干渉に強く、対象物の瞬間速度も割り出すことができることが挙げられる。

このレーダーがユーザーの体やその他物体にあたって返ってくる反射波の信号を処理し、ユーザーの睡眠エリアなどの特定の対象範囲を分離。大きな体の動きから、1cm未満の呼吸まで、領域内のさまざまな動きを検出して特徴づけることができる。デバイスに最も近い人の呼吸や体の動きから、その人がどのように眠っているのかをセンシングする。

就寝中の咳やいびき検知機能も搭載

また、Nest Hubは睡眠センサだけでなく、オーディオセンサも組み合わせる。ユーザーがベッドサイドのNest Hubで「咳やいびきのモニタリング」を選択すると、デバイスはユーザーが眠ったのを検知すると、デバイス上でオーディオセンシングを開始する。畳み込みニューラルネットワークで処理をして、咳やいびきを検知することもできる。

睡眠モニタリング単独でのマネタイズは未定

この機能は来年まで無料で利用することができ、その後有料化するかどうかは決まっていない。このスリープモニタリング機能は、睡眠時間を取得することはできるが、深い睡眠などの睡眠ステージの判定はまだできないようで、ごく基本的な機能に留まる。

しかし、それでもこの技術は、ウェアラブルデバイスを身に着けたくない人で、かつ、カメラとは違いプライバシーに配慮された方法で、睡眠をモニタリングするには良い方法となっている。

また、将来的にはFitbitの睡眠モニタリング機能と連携する方法も模索していることを明らかにしている。


ー 技術アナリストの目 -
今回発表された睡眠モニタリングは睡眠ステージの計測もできないため、まだ基本的な機能に留まっています。レーダーベースの睡眠モニタリングデバイスで比較すると、ResMedの睡眠モニタリングの方が機能性が高く、こちらは睡眠ステージの計測まで可能になっており、精度の裏付けもしっかりしています。そのため、今回発表した技術の新規性自体は特に無い、というのが筆者の感想です。ただし、Nest Hubという消費者が購入しやすいデバイスで機能が搭載されたことには意味があり、消費者が睡眠モニタリングをどのように使うのか、については興味深く注目したいと思います。