英国の非侵襲血液モニタリング技術を開発するベンチャー企業のZedsenが、4月6日、シリーズBで12m$を調達したことを発表した。合わせて同社は、Caroline Hargrove博士をCTOに迎えたことも発表した。なお、Hargrove博士はAIドクターを開発する同じくベンチャーのBabylon HealthのCTOだった人物である。

(補足)Babylon Healthは医療診断チャットボットアプリでの診察、テレビ電話で在宅の専属医師の面談を可能にするシステムを開発しているベンチャー企業で、すでに数百億円以上の資金を調達している。

非侵襲で血液の状態を分析する技術

Zedsenは2014年に設立されたロンドンベンチャーだ。同社が開発をしているのは皮膚につけるパッチ型センサで、皮膚の外側から血液の状態をモニタリングするという非常にチャレンジングな技術である。

どの様な技術かというと、HP上では技術についての言及がほとんどないが、複数出ている同社の特許を見ると、静電容量式センサであることがわかる。静電容量とは、コンデンサなどの絶縁された導体においてどのくらい電荷が蓄えられるかを表すもので、通常この静電容量センサはタッチパネルなどでセンサ表面に物体があるかどうかを検知したりする。

同社はこの静電容量センサをアレイ状にして、体内の血中成分の変化を、その誘電率の変化から検知しているようだ。そのユースケースは、前血糖病(前血糖病とは、糖尿病として分類されるには血糖値は高くないが、予備軍として分類される)の兆候検知、生殖能力のモニタリングなどである。

同社の特許は、基本的には発明者がHrand Mamigonians博士(同社のCTIO:技術顧問のような位置づけ)となっており、同社が特許の譲渡先となっている。このHrand氏は英国で著名な多くの大学で客員教授を務めるセンサーの第一人者であり、同社の技術の出自となっている。

今回、新しくCTOになったハーグローブ博士はこう述べている。
「血液を高水準で監視するための低コストで非侵襲的なテクノロジーは、運動能力を向上させるために代謝の健康状態を監視している場合でも、糖尿病に向かう傾向を改善させるために取り組んでいる場合でも、人生を向上させる深い影響を与える聖杯です。Zedsenの新しい非侵襲的技術に基づいたそのような革新的な製品の開発に取り組み、Zedsenの素晴らしいチームの一員であることを嬉しく思います。」

(今回参考のプレスリリースはこちら


ー 技術アナリストの目 -
静電容量式の生体センシングはあまり数は多く無いですが、日本でも産総研や大学で研究がされています。通常タッチセンサなどで使われるこの技術が、果たして本当に生体データを非侵襲で測定するのに使えるのか、どの程度の精度なのかは現時点では全く開示されていません。一方で、今回新しくCTOになったハーグローブ博士は大英帝国勲章を受章するような著名なエンジニアであり、技術の出自もしっかりしています。興味深いですが、現時点ではまだステルスモードに近く、今後測定データが発表されることを待ちたいと思います。

参考文献:

1) Capacitive matrix sensor for measuring permittivity of an object, CA2892615C

2) Pressure-compensating non-invasive blood-component measurement, US20200337613A1