無人ロボット・ドローンで求められる非接触給電

自動運転技術や各種センサーを使った無人車両や、自動走行ロボット、四足歩行の自律制御ロボット、自律ドローンなど、人が介在しない形で使われることを想定した車両やロボットが様々な形で開発されている。

よく、こうした車両やロボットのセンサーに焦点が当たる一方で、今後市場が顕在化するにつれて、重要になってくるのがバッテリーの充電問題だ。

通常、自律ロボットや自律ドローン等において充電タスクも含めて自動化するには、非接触給電の利用が有望視される。しかし、自律ロボットやドローンが充電ステーションへ移動し、高い位置精度で給電タスクを実行できるのであれば良いが、屋内や変化のある屋外などでの環境では必ずしも高い位置精度を出すことが難しいケースもある。ロボット・ドローンが短時間しか停止しなかったり、給電の中心位置から外れたりすると、給電効率が低下してしまう。

そこで、ある程度の距離を高効率で給電可能な技術が模索されている。

誘導・共振方式の良いところを組み合わせた独自給電方式を構築

よく使われる非接触給電の技術は磁界結合(電磁誘導)方式だ。これは電動歯ブラシや電動シェーバーなどですでに実用化されている。しかし、この方式は充電部と給電部をかなり近接させる必要がある。

そこで、同じ磁界結合の一種で、磁気共振方式が期待されている。この技術は、送受電に用いるコイルを「共振(共鳴)状態」とすることで効率を上げる。しかし、WiBoticによると、一般的な共振システムには効率が最大化される「スイートスポット」があり、やはりロボット・ドローンの位置精度が問われるようである。

WiBoticが開発しているのは、こうした課題を解決する、誘導方式・共振方式の良いところを組み合わせた新しい給電システムだ。ワシントン大学での8年以上の研究に基づいて開発された「アダプティブマッチングシステム」は、相対的なアンテナ位置を常に監視し、ハードウェアとファームウェアの両方のパラメータを動的に調整して、最大の効率を維持する仕組みを持つ。結果として、数cm離れた状態でも高効率の給電を可能にする。

同社公開の動画への直リンク

NASA の「ティッピングポイント」プログラムでも採用

WiBoticの技術は、NASAのプログラムでも採択されている。この「ティッピングポイント」プログラムは、ドイツの大手企業ボッシュ、Astrobotic社、WiBotic社、ワシントン大学でパートナーシップを結び、月面を探索する小型ロボット向けのワイヤレス充電と、インテリジェントな自律ナビゲーション技術を研究開発するものとなっている。

Cube Roverと呼ばれる靴箱ほどの大きさのロボットは、GPSを使うことができない宇宙環境において、月の荒涼とした予測不能な状況をナビゲートし、ドッキングステーションに帰還し、自律的に充電を行う。

Astrobotic公開の動画への直リンク
NASAのプロジェクトについて説明をしている

Wiboticは最近、同社の2つの製品で欧州のCEマークを取得したことを発表した。米国でもFCCの承認を完了しているため、これで世界中の多くの国の規制に対して準拠をしていることになる。今後、どのような企業とパートナーシップを行い、市場を広げていくのか同社の動きに注目だ。


ー 技術アナリストの目 -
今回は非接触給電技術を開発するベンチャー企業Wiboticの紹介でした。同社は日本においてはマクニカとも提携しているようです。同社の強みが特に活きるのは、複数のロボット群の制御を行うような用途や、または単機のロボットでも複数の場所で充電を行う必要があるような環境での用途となっています。ややニッチな領域ですが、NASAのプログラムにも採択されているように、今後、無人工場でのAGVやインフラ点検のドローン、農業用ドローンなどで利用される可能性のある興味深い技術です。

参考文献:

Wireless power delivery in dynamic environments, US20190280527A1